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1.自然破壊と浪費の愛知万博
2.愛知万博計画の経過
3.万博見直し運動の経過と成果
4.万博中止の運動を旺盛に展開しよう
5.万博問題資料集

愛知万博問題―自然破壊と消費を県民に押しつける「環境万博」―

 みなさん。いま、大きな話題になっている愛知万博の正式な名称は、2005年日本国際博覧会です。2005年3月25日から9月25日、愛知県の瀬戸市、長久手町、豊田市の約173ヘクタールの会場で、「自然の叡智(えいち)」をテーマにして行われます。この愛知万博計画について、考えてみましょう。

自然破壊と浪費の愛知万博計画

博覧会国際事務局(BIE)は21世紀の博覧会について、「人間や社会の要求と自然環境保護の必要性」に十分な配慮を払うとしています。2000年12月にBIEで登録承認され、現在、具体化がすすめられている愛知万博計画は、21世紀の万博の理念と大きくかけ離れています。主な問題点をみてみましょう。

環境破壊

 愛知万博のテーマは「自然の叡智」であり、「環境万博」をめざしています。その環境影響評価(環境アセスメント)は「環境影響評価法の主旨を先取りする新しい環境影響評価のモデルを示す」(旧通産省通達)ものとされています。環境影響評価法では、その対象が市町村をこえて変更する場合には、環境影響評価の手続きをはじめからやりなおすことを定めています。
しかし、会場予定地を当初の「海上(かいしょ)の森」(瀬戸市)から、愛知青少年公園(長久手町)に変えたのに環境アセスメントのやり直しはされていません。国や県、2005年日本国際博覧会協会(万博を準備、実施する団体)は青少年公園の追加調査と環境影響評価書の修正で対応する態度に固執しています。
愛知青少年公園には、「海上の森」と同様の自然が残されており、「春の女神」と呼ばれ、絶滅のおそれのあるギフチョウは「海上の森」以上に生息しているといわれます。日本一小さいトンボであるハッチョウトンボも多数発見されています。青少年公園の周辺でも絶滅危ぐ種のオオタカの営巣が2000年6月に発見されました。オオタカのエサ場は約300ヘクタール。青少年公園全体がエサ場となっています。

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県民要求の無視と制限

 青少年公園は「青少年の健全育成を図ること」(同公園「設置目的」)を目的につくられた公園です。幼児からお年寄りまでどんな年代でも楽しむことができる複合施設です。
青少年公園は年間約300万人の利用者があります。とくに、公園内のアイススケート場は公式大会が開催できる全国的にもトップレベルの施設で、オリンピックをめざす多くの選手や青少年が利用しています。万博で施設が使えない期間は約5年。1500万人の万博参加者のために、のべ1500万人が公園施設を利用できなくなります。また、万博の施設の建設で、これまでのように、青少年が安心して利用できない公園になるおそれもあります。

アクセスの問題点

 会場への輸送手段(アクセス)は事実上、シャトルバスだけです。交通渋滞、大気汚染、騒音など付近の住民に対する被害は、はかりしれません。
最近、常電導吸引型磁気浮上式リニアモーターカー(HSST)を走らせる東部丘陵線について、正式の観客輸送手段とするという報道がありました。しかし、東部丘陵線が、2005年段階で1日利用客を長久手町の現在の人口の7割にあたる3万1000人も見込むのは過大な需要見積もりです。万博が開催されるのはわずか半年間にすぎません。トンネルや高架における事故への安全対策のなさ、電磁波による人体への影響だけでなく、愛知万博との関係でも、接続する地下鉄との輸送能力の違いによる混乱、車両基地(基地周辺でオオタカの営巣が発見されています)建設や東部丘陵線本線の建設による自然破壊の問題もあります。採算問題では、需要見通しからみて赤字は必至といわれています。新交通システム・桃花台線(小牧市)は赤字が深刻で、愛知県と小牧市が新たに10億円の無利子貸付を行っているように、新たな負担を愛知県と周辺自治体に及ぼすことが十分予測されます。

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不安な警備・安全

 世界から多くの人々が参加する以上、警備や安全対策は重要問題ですが、会場が森の中では、どこからでも妨害者が会場に入ることができ、万全の警備をすることは困難です。仮に高いフェンスで森を囲めば、重大な自然破壊になります。現在の計画では、回廊など高い建築物が検討されていますが、博覧会協会の最高顧問だった堺屋太一氏も安全上、問題があると認めていました。このほど、発生が懸念されている東海地震の震源域が愛知県寄りに修正されましたが、万博の安全性がますます危ぐされます。

ばく大な財政負担

 愛知万博の会場建設費は約1350億円、それに別枠の関連建設費約300億円と合わせて建設費の総額は1600億円以上が予定されています。このうち愛知県をはじめ地元自治体の負担は600億円以上になることが考えられます。この地元負担の割合はこれまで日本で開かれたどの国際博覧会よりも重いものです。万博の運営費が赤字になった際、国は負担しないことを決めており、この点でも地元への負担が押しつけられることが予想されます。堺屋氏も、現計画では400億円の赤字になると予想していました。
しかも、愛知万博は、特別博であるとの位置づけから、外国館の建設費用を開催国が分担することになっており、外国の展示が増えれば増えるほど建設費が膨らむ仕組みになっています。さらに、東部丘陵線の建設費用に約1000億円(その後の運営費も赤字になることが予想されます)がかかり、シャトルバスの駐車場の建設は各自治体負担になるなど、わずか半年間の万博に多大な費用が必要とされています。
2000年に行われたハノーバー万博は、「人間・自然・技術」をテーマとし、本格的に自然環境問題に取り組んだ万博でしたが、入場者数が目標の半分近くしか集まらず、約1200億円というばく大な赤字を生み、国と州(県)が赤字の穴埋めをしました。
愛知県は、2000年9月の東海豪雨災害で、死者6人、負傷者84人、6万5648棟の住宅被害が出ました。いまなお被害の爪あとは県民の生活に影をおとしています。ムダと浪費の大型開発にお金を使ってきた結果、庄内川の堤防の整備状況は全国平均の半分以下、破堤した新川流域の整備状況も極めて遅れており、都市防災はおそまつなものです。県民の中からは「こんな時になぜ万博か」「万博よりも防災、被災者支援策を」という声が強くあがっています。

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無視される県民合意

 愛知万博計画は、財政計画をはじめ、期間、万博のテーマ、会場計画など万博計画の核となる部分について、一度も県民の意思が直接確かめられたことはありません。
愛知県民の中からは、97年と2000年の2回にわたって、万博に関する県民投票を求める署名運動がおこりました。しかし、愛知県当局と自民、民主、公明など県政与党は、「お金がかかる」「議会で議論してきた」などの理由で、県民投票を求める県民の声を無視しつづけてきました。しかし、2000年2・3月に行われた県民投票を求める運動の署名が3年前の運動に比べ、3倍近く集まったことに示されるように、県民投票を求める県民の世論は年々、高まっています。ウィーン博やハノーバー博では住民投票がおこなわれたように、大型プロジェクトについて住民投票を行い、住民の意思を確かめることは世界の常識です。
マスコミのアンケートでも、愛知万博に100億円以上の負担をすることに6割の名古屋市民が反対。2001年の参議院選挙を前にした市民団体主催の公開討論会では、参加者の約7割が、万博開催に反対の意思を表明しました。

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