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【02.09.29】構想から30年これから30年 設楽ダムは本当に必要か 八田ひろ子参院議員が質問

2002年9月29日 「愛知民報」

 国が設楽町に建設を計画している設楽ダムについて水没住民などでつくる「設楽ダム対策協議会」と国土交通省設楽ダム調査事務所が19日、用地測量に関する覚書に調印しました。しかしまだ調査段階で基本計画も固まっていません。構想から30年、完成予定はこれから30年後です。設楽ダムはほんとうに必要か――。

渇水には

 「毎年、渇水が繰り返されており、水源開発が必要」と国土交通省はいいます。ことしも雨が少なく、宇連ダムは底をつきそう。水資源開発公団などによる豊川用水節水対策協議会は20日から農業用水、工業用水は各40%、水道用水は25%に節水を強化しました。しかし毎年、取水制限が叫ばれても、緊急を要する事態には至っていません。

 国は豊川水系の河川整備目標として「渇水に強い豊川」をあげています。設楽ダムは整備計画の中心事業で、総貯水量1億トン。新規開発水源は年間2千万トン。ほかに不特定利水分が5700トンあります。国は渇水時に使うといいますが、不特定利水分はまず河川流量を維持するために放流しなければなりません。

 豊川水系流域は724平方キロと広大です。設楽ダムができても、集水域は山峡で幅10キロ、奥行き6キロ、面積は62・2平方キロと同規模ダムの3分の1〜6分の1しかありません。豊川水系流域全体の8・6%の雨水しか集められないのです。

水需要は

 愛知県の地方計画「愛知2010計画」によると、東三河の水需要予測は2010年で2億6800万トン。ことし4月から稼働しはじめた豊川総合用水事業の大島ダム(総貯水量1200万トン)をふくめると、供給可能量はすでに3億1千万トンに達しています。

 「2010計画」は1985年から93年の水需要の伸びと今後の経済成長率を2・7%と見込んで計算したものです。実際の成長率はマイナスで工業用水はあり余っています。2010年以降県人口は減少します。全国市民オンブズマンが昨年8月調べた国と自治体の水需要予測によると、愛知は水道用水で全国2番目に過大でした。

 豊川水系からの農業用水の取水量は1997年で1億8200万トンと取水全量の約64%を占めました。国は「渥美地方にはハウス栽培が多く、農業用水の需要は増える」といいますが、80年代以降は水田面積の減少などでずっと2億トンを割っています。

 農業用水は管理ロスが多く、その量は年間4千万トン。宇連ダム2個分にもなっています。余っている工業用水の取水権を見直せば農業用水も十分まかなえます。

洪水には

 水需要が減少する中、そこで叫ばれるのが「治水」です。しかし豊川水系で危ないのはむしろ中下流域の中小河川です。流量調整池などの整備こそ急ぐ必要があります。

 設楽ダムが渇水にも洪水にもあまり役立たないとすればどうするか――。

 「設楽ダムと環境を考える東三河の会」は「洪水調節を兼ねた雨水貯留、流域調整池を各支流に設けることが現実的。1カ所約100億円ででき、10数カ所造れば設楽ダムの2千万トンをカバーできる」と提言します。

 日本のダムの数は01年度で2734。計画・建設中のダムは日本最大の徳山ダム(総貯水量6億6千万トン)を筆頭に400近くにのぼります。一方、水余りなどで国が中止を決めたのが約90ダムあります。

 設楽ダムの完成予定は2030年。そのころには、ダムは無用の長物になっているかもしれません。

設楽ダムをめぐる経過

1973 県知事が設楽ダム建設の意向を表明
     ダム建設反対連絡協が発足
  74 5000人余のダム建設反対請願。町議会がダム反対を決議
  84 建設省が航空測量申し入れ
  87 航空測量受け入れ協定に調印
  91 後藤米治町長誕生。反対連絡協が解散、設楽ダム対策協議会が発足
  92 現地立ち入り調査を承認
  96 建設省が8000トンから1億トンに規模変更を提示
  98 水没地区住民が早期解決を請願。河川法改正により、「明日の豊川を考える流域委員会」を設置
2000 豊川流域委員会に豊川水系河川整備計画素案を提示
  01 豊川流域委員会が同計画に同意すると答申。国土交通省が設楽ダムを2030年までに建設するとした計画案をまとめる
  02 用地測量調査に同意。覚書に調印


基本計画も利水の正式要請もまだ
八田ひろ子参院議員が質問

 日本共産党の八田ひろ子参院議員は11日、参院決算委員会で設楽ダム問題について質問しました。国土交通省の鈴木河川局長が答えました。やりとりの要旨を紹介します。

 八田    いままで60億円の国費を使い、来年度概算要求では15億円となっている。設楽ダムはど        ういう段階か。

 河川局長 下流域11市町で構成される「豊橋水系総合開発促進期成同盟会」から強い要望を受         けて事業をすすめている。用地測量が可能になり、来年度から建設事業に移行するというこ        とで予算要求をしている。

 八田    基本計画までこれから何年もかかるという段階であるということか。

 河川局長 基本計画はまだできていない。そのための調査をこれからやっていくことになる。

 八田    ダム建設はまだ確定していないということですね。ダムサイトの川には国天然記念物のネコギ        ギがいる。環境調査は始まっていないと思うが、どうか。

 河川局長 設楽ダムは環境影響評価法の対象事業となる。これまでに基礎的な環境調査をおこなっ         ているが、今後さらに地元の了解を得て必要な調査をする。

 八田    設楽ダムの建設費は2千億円と地元整備局のパンフレットに示されているが、どのような積         算か。

 河川局長 ダムの規模を見込み、これまでのダム事業の実績をふまえて算定した。今後、基本計画策        定時に正式な事業費を固める。

 八田    基本計画ができてしまってから示されたのでは、地域の住民はだれが、いくら負担するのかわ        からない。利水について需要者から正式な申し込みがあったのか。

 河川局長 利水者となる予定の愛知県、地元11市町、豊川総合用水土地改良区等から水道用水        、農業用水を確保するため事業の推進を要望されている。

 八田    需要者から正式な要請があったのか。

 河川局長 ちょっといま確認できないが、流域で大変な渇水が繰り返されている。最近10カ年に12回        もの取水制限をしいられており、安定した水源の確保が必要である。治水についても洪水         の被害が繰り返されている状況をふまえ、設楽ダムの建設が必要と判断している。いずれ正        式な手続きをへて県議会、知事の意見も聴きながらきちっとした基本計画を定めていく。

 八田    今の説明はおかしい。設楽ダムは農業用水が中心で造られるというのが30年前からの構         想だ。農業用水はいらないという申し出があった場合、造らないということになるのか。

 河川局長 度重なる要望という形で愛知県からダム推進についてうかがっている。仮定の質問には答え        られないが、渇水、洪水被害が繰り返されている状況から多目的ダムとしてすすめるというこ        とだ。

 八田    仮にみなさんが水はいらないといっても、あくまで造るということか。

 河川局長 いまおっしゃったようなことはとうてい想定されない。この事業をきちんとすすめてまいりたい。

 八田    「豊川を守る住民連絡会議」と「豊川を勉強する会」からダム建設の凍結と撤回を求める         要望書が国土交通大臣にあがっている。21世紀の河川計画というのは緑のダム、森林の 機能向上とか、この地域ではかすみ堤と調整池とか、いろんな知恵がある。そういうことを無 視して30年前の構想を押しつけるというのは、今の政治の流れにも反する。


11市町議会で ”推進決議”
豊橋市議会 高柳氏が反対討論

 「恒常的な水不足」などを理由に豊川水系下流の11市町の9月議会は相次ぎ、「東三河の悲願」などとして設楽ダム建設促進を求める意見書を可決しました。豊橋市議会では17日、日本共産党の高柳大太郎議員が反対討論に立ちました。

 高柳議員は、治水について「設楽ダムは新城市石田地区で毎秒1000トンの効果しかない。洪水を防ぐには3000トンが必要で設楽ダムをあと2つ造らなければならず、現実性のない計画だ。洪水が起きやすいのは中流域であり、中小河川の整備を急ぐべき」としました。

 「恒常的な渇水」について同議員は「上水はバルブ弁の調整、農水は調整池の貯留水で補い、これまで大きな被害は出ていない」と反論しました。

 高柳議員は、県の水需要予測が過大であり、建設予定地に生息する天然記念物の淡水魚ネコギギやオオタカの環境が破壊されると指摘。「設楽ダム建設が先にありきでなく、節水対策はじめ自然と共存できる開発を図るべきだ」と強調しました。


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