政策

愛知の漁業再生施策への要請書―農林水産大臣宛

農林水産大臣 赤松広隆 様

日本共産党愛知県委員会 委員長 岩中 正巳

伊勢・三河湾は、木曽三川、矢作川、豊川など多くの河川から流入する栄養塩類と、生物の生息に好適で高い水質浄化機能を有する干潟・藻場を含む浅場が広がることによって、全国でも屈指の生産性を誇る漁場です。

しかし、近年の港湾整備、臨海工業地帯の造成等により、沿岸域の浅場が喪失し、生物生産機能や水質浄化機能が大幅に低下したことによって赤潮や貧酸素化が顕著となり、漁場環境が悪化し、海苔養殖や採貝漁業など愛知の漁業に深刻な影響が出ています。とくに、伊勢湾常滑沖の浅場を埋め立てた中部国際空港の建設は潮の流れや海況に大きく影響しました。そのうえ、今、三河湾に深刻な打撃を与える設楽ダムの建設が予定されています。

日本共産党は、この間、野間漁協、三谷漁協、愛知県漁連などと懇談し、漁業再生にむけて要望をいただいてきました。それらをふまえ、以下に、愛知の漁業再生施策への要請を行います。

1、伊勢湾・三河湾の環境保全・修復施策の推進について

(1)魚貝類の生息に深刻な打撃を与えている貧酸素水塊の抑制のためには、浅場の保全・修復が最も重要です。愛知の漁業の「生命線」であるアサリが日本一わく六条潟へ悪影響を与える設楽ダムなどの開発行為を中止し、浅場修復の対策をすすめてください。

(2)豊川水系フルプランのなかで年1072万5千立方メートルを農業用水の新規需要量として、設楽ダムをつくる理由の一つとしています。新規需要量を算定するために必要な「既開発水量」の計算方式を明らかにしてください。

また、設楽ダム建設による三河湾への影響について調査を実施してください。

(3)中部国際空港建設により、空港島南部海域のノリ、アサリ漁業へ著しい悪影響がでています。その原因は、木曽三川の河川水が空港島により遮られ、潮の流れが変わったことと、漁業者は考えています。
より詳細な漁業モニタリング調査を新たに実施し、その結果をふまえ、ノリ、アサリの生産量回復のための対策と生産量激減による漁業者への支援策をおこなってください。

(4)漁場環境や赤潮・貧酸素塊の動態をリアルタイムで把握できる自動観測ブイの設置等、モニタリング体制の充実を図ってください。

(5)安定した漁業活動を保証するため、漁場環境の動向を漁業者自ら把握し、また、海域での開発事業の影響を予測するための情報収集・研究組織を構築するための漁業者の取り組みに支援を行ってください。

2、ノリ、アサリ漁業への振興について

(1)近年生産額が落ち込んでいるノリ養殖業の再建のために、協業など生産構造改善対策の早急な実現や、高水温耐性品種の開発など温暖化対策の推進をしてください。
ノリの販売単価が下がる一方、燃料や機械の導入などのコスト高でノリ漁業者の経営が厳しくなっています。大手スーパーなどの買いたたきをやめさせ、魚価安定制度を創設してください。

(2)アサリ稚貝発生海域を保全するとともに、種苗放流事業や漁場耕転事業、食害生物等駆除事業に対する支援を行ってください。

3、漁船漁業など漁業全般の支援について

(1)地域、経営形態や規模に応じた漁業の、最低所得水準を決め、漁獲の減少や価格の低落でそれを下回った場合に、差額を補てんする所得補償制度を創設してください。
漁業共済組合について、一つの業種まるごとでなく、漁業者個人でも加入できるように、条件を緩和してください。

(2)干潟の採貝、資源にやさしい選択性漁具の導入など環境保全に貢献している漁業、漁民や、油、ゴミ、流木の除去など漁村住民による沿岸部の清掃、魚付林や河川上流部での植林などの取り組みに対して、助成などの支援を行ってください。

(3)禁漁等資源回復のための措置の徹底に対する経済的支援を行ってください。

以上