日本共産党愛知県委員会
(1)神田県政のゆきづまりと破壊された県民生活、地域経済
神田知事が四選不出馬を表明しました。その背景には、自民党政権から民主党政権に引き継がれている、「構造改革」の名による新自由主義の経済政策での国民生活と経済の破壊と、「地方分権改革」の名による地方自治体のまともな機能の破壊という二重の政治悪に追随してきた神田県政の、経済と政治の両面でのゆきづまりがあります。
経済では、2008年秋のリーマンショックを契機におこった経済危機で、極端な外需依存、トヨタ中心の「国際競争力強化」路線の破たんがはっきりしました。中部国際空港の開港、愛知万博の開催、トヨタの躍進で「全国最強」と言われた愛知県は、雇用破壊・生活悪化・中小企業危機の「全国最悪」に転落しました。国民健康保険の保険料滞納世帯は23万世帯を超え、生活保護も増加の一途で、4万世帯を大きく超え、生活苦などを理由にした自殺者の数も1500人を超えるなど県民生活は破壊されました。その結果、愛知県は、税収が激減し、過去最悪の財政危機におちいりました。
神田県政は、「トヨタが伸びれば、県民生活も県財政も豊かになる」と、生活支援の予算を削りに削りながら、空港、港湾、高速道路など多国籍企業の活動を支援するための大型公共事業に県の力を集中してきました。その結果が、外国市場に極端に依存し、派遣労働など非正規雇用に頼る経済構造をつくり、リーマンショックでゆきづまりました。2010年度の県債(県の借金)残高は過去最高の4兆6千億円、一般会計予算の二倍です。神田県政3期12年で約2兆円も県債が増えました。数年後には5兆円に達し、県税収入の4割が借金返済に消えていくと試算されています。
政治の面では、2009年の総選挙の結果、神田県政の与党の自民・公明両党が県内でも敗北し、自公政権の退場となり、神田県政の中心的な政治基盤がくずれました。
神田県政は、県の総合計画『新しい政策の指針』でトヨタなど多国籍企業の「国際競争力強化」を支える大型公共事業の推進を県政の中心課題に位置づけ、県の『行革大綱』で県民生活支援の予算を削減し、体制と仕事を縮小し続けてきました。さらに自衛隊の海外派兵路線を容認してきました。
この結果、県民は、人口一人当たりの民生費は全国43位、同じく教育費は42位、保育所一人当たりの保育士数が47位、児童一人当たりの小学校教員数が45位、人口10万人あたりの医師数が36位、人口10万人あたりの保健師数が42位、65歳以上の人口10万人当たりの介護老人福祉施設数は47位(いずれも県と市町村合計額の2007年全国順位:総務省統計資料)という全国最低水準の福祉・医療・教育の状態におかれ、県営空港や名古屋港は海外派兵のための軍事利用が広がっています。
神田県政は、こうした財界応援・住民犠牲の県政を県議会の自民・民主・公明の「オール与党」にささえられておこなってきました。総選挙での自民・公明両党へのきびしい審判は、神田知事と自民・公明、民主の「オール与党」県政へのきびしい審判でもあります。
愛知県政はいま、歴史的な転換期を迎えています。財界・大企業中心から県民中心へ県政の新しい転換の方向を示し、必要性のない設楽ダムや木曽川水系連絡導水路、中部国際空港2本目滑走路の建設計画の中止など、浪費型大型公共事業に徹底的なメスを入れ、借金を減らし、財政を立て直すことを正面から訴えることができるのは日本共産党だけです。
(2)自民・民主・公明の「オール与党」県議会
日本共産党は、1996年の衆議院選挙で比例東海ブロック3議席を獲得し、98年の参議院選挙では愛知選挙区で初の議席をかちとり、つづく99年の愛知県議選では2議席から4議席に倍増しました。
しかし、日本共産党の躍進をおそれた財界を中心とした支配勢力は、日本共産党をしめ出す「二大政党」化にのりだしました。「二大政党」化の影響があらわれた2003年県議選で日本共産党は議席を失いました。以後、愛知県議会は、野党不在の「オール与党」体制が続いています。
旧社会党と旧民主党が合流してできた県議会の民主党は発足以降、鈴木知事・神田知事を自民・公明とともに推せんし、県政与党の立場を続けてきました。2007年の知事選では、民主党中央の指示で、自公との”相乗り”から離脱し、神田知事に対抗する知事候補を立てました。しかし、知事選が終わると、対決したはずの神田知事の県民犠牲の予算案に賛成し、事実上の与党に戻りました。
2009年の総選挙の結果、民主党政権が発足しましたが、2010年度の神田知事の予算案に自民・公明両党とともに賛成しました。マスメディアから「設楽ダムも木曽川水系連絡導水路も全部賛成。裏金が見つかっても決算は認定してしまう。自民党県議団との違いを見つけるのは実に難しい」(「毎日」2010年4月1日付)と批判されるありさまです。
民主党の菅政権は「米国と財界に忠誠を誓い、古い自民党政治の新しい執行者となり、自民党政権と何ら変わらない姿を明瞭にしています」(2中総決定)が、愛知県政の自民、民主も政治の中身は同じです。民主党の知事選候補の御園慎一郎・元県総務部長は、旧自治省官僚で、財界の「新成長戦略」と、地方自治体の機能と役割を弱め、地方自治を壊す民主党政権の「地域主権改革」を主な政策とし、「国も巻き込み実行していく」と言っています。リーマンショックや自公政権退場でゆきづまった大企業の「国際競争力強化」路線を、政治基盤を民主党に移し、中央直結・財界奉仕の方向で立て直しをはかるというのが御園路線です。
知事選・県議選で、自民と民主のどちらの側が勝っても県政の転換にはつながりません。
「みんなの党」は自民党の分派です。知事選に立候補を表明したみんなの党の薬師寺候補は、国政での自民、民主と同様に、大企業優先の法人税減税を訴え、多様な県民の意見を反映させる県議の定数削減を訴えています。県議会に出ても「オール与党」の仲間が増えるだけです。名古屋の河村市長と同じように弱肉強食の新自由主義のうえに、「政界再編の触媒」として自らの党の解体を大前提にしている政党です。
いま、県議会は事実上の「オール与党」です。県幹部は「野党のいない議会は異常。行政側にも緊張感がない。なれあいと言われても仕方がない」と語っています。県民が福祉・教育の改善・充実や消費税増税・自衛隊海外派兵反対の意見を県議会に届けようと、請願を県議会に提出しようとしても、自民、民主、公明3党が紹介議員を拒否するために請願できず、憲法に保障された請願権を行使できない状態です。
日本共産党を県議会に送り、「オール与党のなれあい県議会」に新風を吹かせましょう。
(3)日本共産党の県議選重点政策
民主党政権は、「地域主権改革」の名で、国の社会保障責任を投げ捨て、「住民福祉の機関」としての地方自治体の役割を弱め、道州制導入に向かって市町村再編をすすめ、財界の要求する大型公共事業や広域的な産業政策を推進する仕組みをつくろうとしています。「政治主導」「脱官僚」のかけ声も、住民福祉増進のためではなく、財界・大企業の要求をより効率的に実行する体制をつくることが目的です。
また、「議会改革」の名で、議会と首長の二元代表制を事実上否定し、議会と行政を一体化させ、首長と議会多数派の独裁的な政治体制をつくろうとしています。
日本共産党は、県政に対し、毎年、予算要求として基本的な政策要求を申し入れていますが、こんどの県議選で、「地域主権改革」の名による社会保障の解体や地方自治の破壊を許さず、憲法と地方自治法の精神を生かし、福祉の心を県政に取り戻すため、以下の重点政策をかかげてたたかいます。
【1】住民負担増と社会保障切り捨てに反対し、くらしと福祉をまもります
- 国民健康保険税(料)を一人当たり一万円の負担軽減をします。患者負担金の軽減を拡充します。
- 18才以下の医療無料化をめざし、県として「中学卒業まで」入・通院とも無料にします。
- 後期高齢者医療制度の即時廃止を国に求め、「75歳以上」の高齢者は、入・通院とも無料にします。
- 特別養護老人ホームは緊急に増設、他の介護施設も充実します。介護の保険料・利用料の負担を軽減します。
- 公立病院と地域医療を守り、再生します。
- 巡回バス、循環バスを支援し、住民が利用しやすいように改善、拡充します。
- 防災対策、被災者支援制度の拡充など災害対策を強化し、公共施設はもちろんのこと、多数が利用する施設、歩道、地方の駅や利用者数の少ない駅などのバリアフリー化をすすめ、空き交番を即時に解消するなど、防災、安心安全のまちづくりをすすめます。
【2】子どもたちの豊かな成長を保障する教育をすすめ、子育てを応援します
- 認可保育所を増設し、つめこみ保育をやめさせ、待機児童をなくします。
- 高すぎる保育料を引き下げます。
- 公私間格差を是正し、私学の教育条件をきちんと保障するため、私学助成を拡充します。就学援助金、高校奨学金制度などを拡充します。高校教育費は公・私とも完全無償化します。
- 公立学校の非正規教員の正規化をはかり、小学校・中学校の30人学級を実現します。
【3】地域経済を振興し、安定した雇用を拡大します
☆中小企業支援の拡充
- 景気・雇用に寄与する住宅リフォーム助成制度を創設します。
- 下請製造業を守るため、工場賃借料、水道光熱費(特に、工業用電力基本料金)、ローン、リース代など固定費の補助制度をつくります。
- 地元業者を大切し、雇用を増やす「中小企業振興基本条例」と、地元中小企業の仕事を増やす「公共調達基本条例」を制定します。
☆安定した雇用の拡大
- 県内企業に、正規雇用の拡大を強力に働きかけます。合理的理由のない「短期・反復雇用」「契約社員」は不公正な契約として規制し、正社員に移行させます。残業規制、有給休暇の促進を強力に進め、ワークシェアリングで雇用拡大を進めます。
- 地域循環型、内需型の産業を重視し、介護、医療、保育など社会保障分野や、教育、農林漁業、環境、公共事業分野での雇用創出に取り組みます。
- 高校生・大学生・青年の就職支援策を強化します。職業訓練を充実・強化します。
- 最低賃金を思い切って大幅に引き上げるとともに、県発注事業で働く人の賃金が時給最低千円を下らないようにする公契約条例を制定します。
☆農林水産業の再生
- それぞれの生産や流通・加工の実態にそくして価格保障(野菜・果樹などの価格安定・支持、サトウキビ、大豆、麦などの内外価格差是正、牛乳や肉畜、子畜にたいする価格補てんなど)と、生産コストに見合う水準での魚価と水産物価格の安定をはかり、漁業者が操業を持続できるよう「調整保管」などと所得補償を導入・拡充します。
- 農水産物と産直・食品加工、製材業と住宅建設などで、食と住にかかわる安全・安心の生産・流通を築くことを通じて、農林漁業者・関連業者と消費者の共同を広げ、地域の再生をすすめます。
【4】愛知の自然環境を守り、温室効果ガス大幅削減など環境対策を充実します
- 里山、汐川干潟、六条潟の保全や伊勢湾、三河湾の汚だく防止・水質改善など再生をすすめ、愛知の自然環境を守ります。
- 自動車の総量規制や大企業への規制を強め、温室効果ガスの大幅削減にとりくみます。拡大生産者責任の立場で、産業廃棄物の排出抑制を大企業に求め、最終処分に至る経済的負担を含めて排出業者に責任を負わせます。
【5】憲法改悪と日米軍事一体化・海外派兵体制の強化に反対し、平和行政を推進します
- 航空自衛隊小牧基地の基地機能強化に反対するとともに、自衛隊専用基地化と米軍使用は認めません。県内港湾の軍事利用に反対します。
- 日本を海外で戦争する国に変える憲法改悪に反対します。「非核愛知宣言」「非核平和条例」を制定し、アジア諸国をはじめ世界各国との平和交流を推進します。日本が行った侵略戦争と植民地支配の反省にたった「非核平和センター」を設置し、関係資料を展示します。
【6】地方自治・住民自治の拡充をはかります
- 道州制導入と市町村合併の強制に反対し、市町村を応援します。
- 合併がすすめられた市では、旧市町単位で、市民の声を生かす「議会」や自立した財政執行ができるなど、住民自治がすすめられる仕組みづくりをすすめます。
【7】県民の声を生かし、行政のチェックができるように、オール与党の県議会を改革します
- 県民の請願を極力尊重し、情報公開を徹底するなど県民の声を議会に反映し、県民に開かれた議会に改革します。
- 議会基本条例を制定し、少数意見の尊重、議論の活発化、住民への公開と参加の促進をはかります。
- 議員報酬は削減の方向を明確にし、第三者機関を設置して、その検討結果を尊重した報酬額に削減します。
- 政務調査費(議員一人年間600万円)は、交付額を減額するとともに、「一円以上」の領収書添付・公開を義務付けて使途を透明化します。
- 議員の費用弁償((定額9500円+実費加算)は実費支給方式に改め、節減を図ります。
- 全議員が任期中一度は参加し定例行事化している議員海外調査制度は、廃止します。
【8】大企業応援から、「暮らし最優先」「内需優先」の経済に切り替え、県民の懐を温かくし、中小企業の再生をすすめて地域経済を活性化させて、税収増を図るとともに、ムダな大型開発にメスを入れて県民の暮らしを守る財源をつくります
- 大型開発優先をあらため、設楽ダム、木曽川水系連絡導水路、中部国際空港第二滑走路建設など不要な大型公共事業を中止し、生活重視の地域密着型の公共事業をすすめます。貴重な財源を県民福祉の向上に回します。
- すべての第三セクター、外郭団体の事業とお金の使い方にメスをいれます。
- 大企業の法人二税への超過課税率を東京・大阪なみに引き上げ、その税収を防災、福祉など県土の保全や県民生活安定に活用します。
(4)福祉・医療・くらし優先の「県民が主人公」の県政への転換―日本共産党の議席空白克服の意義と党議員団の値打ち
2011年4月の愛知県議会議員選挙は、財界中心から県民中心へ県政の方向を切り替え、県議会に行政をチェックする役割を果たさせ、県政を「住民福祉の機関」としてよみがえらせるために、日本共産党がなんとしても議席を回復しなければならない重要な選挙です。
県政と県議会の閉塞状況を打破する決定打は、日本共産党の県政進出です。日本共産党の政策と値打ちが県民に届けば、勝利できる選挙でもあります。
愛知県議会は2003年の県議選以降、2期8年の日本共産党議席が空白となっています。この克服は、2011年のいっせい地方選挙での愛知県党の最大の政治任務です。
二中総は「来年のいっせい地方選挙は、新しい政治への国民的探求が続くなかで、国政の熱い焦点が地方での政党選択にも大きいな影響をあたえるたたかいとなります。同時に、住民の暮らしと地域経済をどうやって立て直し、地方自治を拡充するかが、大きな焦点となります」と指摘しています。
すでに、愛知県知事選をめぐり、「地域主権」論や「新成長戦略」が議論になっています。また、河村たかし名古屋市長が主導する市議会解散請求が成立し議会解散となれば、2月の愛知県知事選と同時に名古屋市長選・同市議選がおこなわれる可能性があります。また、議会の自主解散で年内にも市議選が行われる可能性もあります。その場合、名古屋市内の県議選は4月に単独でおこなわれることになります。
各党は、総選挙も見すえながら、知事選・名古屋市長選・同市議選・愛知県議選・市町村議選一体の取り組みをすすめています。自民党と民主党は県議会第一党の地位を争い、みんなの党も県議選進出をねらっています。こうした新しい政治情勢の特徴をつかみ、どんな状況でも必ず日本共産党の県議空白を克服する構えと取り組みが求められています。
日本共産党が進出すれば県議会は変わります
日本共産党が県議会に進出すれば、たとえ少数でも県政を動かす力になることは事実で証明されています。
1999年の県議選で前進した日本共産党県議団は県民の環境運動と力を合わせ、瀬戸市の「海上(かいしょ)の森」を開発し会場とする万博計画を変更させ、また、万博後に「海上の森」地域の大規模開発をやめさせ、オオタカの棲む貴重な自然を守りました。自民・民主・公明は「海上の森」開発に賛成でした。反対したのは日本共産党だけでしたが、県民の運動と連携し県政を動かしました。
日本共産党県議団は、長良川河口ぜき、徳山ダム、中部国際空港、臨空都市計画、リニモ(東部丘陵線)などの大型公共事業が現実を無視した過大な需要予測にもとづいている問題を追及し、計画の変更を求めました。それらの事業は強行されましたが、今日、日本共産党県議団が警告したように赤字と経営不振に陥っています。日本共産党は県政のチェック役を果たしました。
神田県政が2000年に自民・民主・公明三党の賛成をえて、子どもや障害者、母子・父子家庭の医療費無料制度に一部負担を導入し無料化をやめようとしたとき、県議会でこれに反対する論陣を張ったのは日本共産党だけでしたが、無料化継続を求める県民運動と力を合わせ、無料制度を守りました。翌年には、こども医療費無料制度の対象年齢を当時の3歳未満児から4歳未満児に引き上げました。
日本共産党県議団は、どんなタブーもおそれず、むだや不公正を正し、行政と議会のチェック機能をはたし、草の根のたたかいと結んで県民のくらしをよくし、住民と議会を結ぶ唯一の架け橋の役割を果たしてきました。
今度の県議選で、日本共産党が議席を回復すれば、議会に行政を批判・監視するチェック機能をよみがえらせ、県政に「住民福祉の増進」という本来の役割を強めさせ、県民の利益を守るたしかな力になることはまちがいありません。
先に挙げた重点政策を実現するために日本共産党を県議会に送り出してください。いつでもどこでも住民奉仕を精神で政治を動かす日本共産党へのご支援を訴えます。
以上