日本共産党愛知県委員会
同 若者雇用対策部長 すやま初美
緊急提言の発表にあたって
本年4月14日に熊本県で発生したマグニチュード6.3の地震は、16日にはM7・3の本震がおき、5月30日までに2回の震度7をはじめ有感地震は1607回に及ぶ大地震になっています。
同日時点で、死者49人、関連死の疑いのある死者20人、行方不明1人、負傷者1736人、避難者8231人、住宅被害11万175棟という大災害になっています。
日本共産党国会議員団は熊本地震発生直後の4月15日、小池晃書記局長を本部長とする「熊本地震対策本部」を立ち上げ、党一丸となって全力で救援活動に取り組んできました。
党愛知県委員会は、熊本地震救援募金に取り組み、県民から託された義援金を被災現地に送りました。
日本列島は「地震列島」と言われているように地震源となる活断層が密集し、全国どこでも大地震がおきる可能性があります。しかも、近年、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本震災と大地震が連続して発生しています。専門家から「日本列島は地震活動期に入った」と指摘され、今回の熊本地震については「経験則外」「予想外」という発言がでています。
愛知県は、地震国日本のなかでも有数の地震県です。愛知県では、濃尾地震(1891年、死者7885人)、東南海地震(1944年、死者・行方不明者1223人)、三河地震(1945年、死者2306人)では多数の死者が出ました。愛知県内で甚大な被害が発生すると見られる南海トラフ巨大地震が想定されているなか、本年4月1日にM6・5の三重県南東沖の地震がありました。その直後、海上保安庁などの観測結果によると南海トラフに地震を引き起こす地殻の「ひずみ」が蓄積されていると報道されました。今日、南海トラフ巨大地震(M9・1、最悪死者32万人)の発生の可能性が想定されています。地震対策の強化は喫緊の課題です。
すやま初美は、2011年の東日本大震災では、津波に直撃された宮城県仙台南部地域で、事故が起きた福島第一原発に近い福島県南相馬市で、それぞれ被災者支援のボランティア活動に参加しました。熊本地震については、6月2日に被災地を視察してきました。
愛知県民に地震への不安が高まっています。日本共産党・すやま初美は、揺れ・津波・原発事故のそれぞれの被災地での自らの経験や、今回の熊本地震をうけての専門家やマスメディアの皆様の指摘を生かし、愛知県民の命と財産を守るため、国の地震防災対策の抜本的強化とともに、愛知の地震対策の見直し・強化の緊急提言をおこないます。
【提言1】県内の活断層など震源の再調査を
愛知県内の断層帯は文献によると30あるといわれています。愛知県は1996年度から98年度に活断層調査をおこない、尾張西部の岐阜-宮線断層、西三河の猿投-境川断層については「地震の注意を怠ることはできない」と指摘しました。
その後、2000年の鳥取県西部地震(M7・3)や2008年の岩手・宮城内陸地震(M7・2)では「未知の活断層」で地震が起きています。
愛知県の地域防災計画は「大きな地震を発生させる活断層の存在のすべてが解明されておらず、いつどこで発生してもおかしくない状況にあります」と警告していますが、熊本地震の「震度7の連続地震」の発生を想定していません。
また、海溝型では東海地震・東南海地震の発生の可能性が指摘されてきました。2011年の東日本大震災をうけ、それらを含む南海トラフを震源とする海溝型巨大地震が研究され、内閣府は愛知県内で最悪の場合、2万3000人の死者が出るとの推定を公表しました。今回の熊本地震が、南海トラフにも影響を及ぼすことが懸念されています。
国と愛知県及び自治体にたいし、県内の震源の再調査とその結果の公表を求めます。
【提言2】耐震基準の再検討と避難所等の点検を
今回の熊本地震では、震度7の激しい揺れが余震、本震と連続しておきる経験則にない事態になり、耐震改修を済ませている建物を含め建造物に大きな被害を与えました。
熊本市内の公立小中学校は2012年度末までに耐震化率100%を達成していましたが、避難所になっている小中学校24校の体育館が損傷し、使用禁止になりました。
愛知県では東海・東南海地震の発生にそなえ、建築物の耐震化を促進していますが、報道によると、常滑市、高浜市、蒲郡市、東栄町は、防災拠点となる庁舎が耐震基準を満たしていません。
また、「耐震基準を満たさない病院が四十七都道府県に点在」していると報道されています。県内医療施設の耐震改修状況についての愛知県の調査結果(2016年6月1日時点)によると、322ある医療施設の耐震化率は71・4%にとどまっています。35の災害拠点病院のうち、「一部の建物に耐震性なし」が5病院、「耐震性不明」が1病院あります。
愛知県と県内市町村は東海地震・東南海地震に備え、住宅の耐震改修をすすめています。県は2020年度までに住宅耐震化率95%をめざしています。
今回の熊本地震の状況をふまえ、公共施設や住宅など建築物の耐震基準や耐震化計画を再検討すべきです。
とくに、避難所や病院、介護施設、庁舎など防災拠点施設の点検は急務です。
【提言3】被災者救援の充実を
今回の熊本地震では、地震がつづくなか、被災者は車中泊を余儀なくされ、エコノミークラス症候群によって高齢者が死亡するという未曾有の事態が起きています。連続地震から身を守るための「車中泊」という事態は、従来の被災者対策の「想定外」です。避難所での給食、プライバシーの確保など新たな課題も明らかになりました。
今回の九州地方地震の事態から、電気、ガス、水道などライフラインの確保、妊婦、乳幼児、高齢者、障がいのある方ら要援護者の避難所および在宅での生活援護、医療・介護、エコノミークラス症候群防止、感染症防止、緊急通報システムの完備などが求められます。
【提言4】浜岡再稼働やリニア中央新幹線建設に反対する
熊本県に隣接する鹿児島県の九州電力川内原発の運転は停止すべきです。愛知県東方70キロメートルに位置し、東海地震の震源域の直上にある中部電力浜岡原発の再稼働に反対し廃炉を求めます。
東日本大震災後、国内の原発の全基運転停止でも電力供給はできました。原発と人類は共存できません。政府は原発の再稼働をやめ、原発ゼロ宣言をおこない、自然・再生可能エネルギーへの本格転換をはかるべきです。この方向は、日本のエネルギー自給率を抜本的に高め、新たな産業・雇用を興すことになるでしょう。
リニア中央新幹線建設は、南海トラフにつながる糸魚川―静岡構造線など数々の活断層を横断して建設される計画になっています。リニア中央新幹線建設の中止を求めます。JRと国は、東海道新幹線の地震・津波対策の強化こそ最優先ですすめるべきです。
【資料】医療施設耐震改修状況調査結果
医療施設耐震改修状況調査結果(平成27年9月1日時点)
すべての建物に 耐震性あり |
一部の建物に 耐震性なし |
全部の建物に 耐震性なし |
耐震性不明 | 計 | 耐震化率 | |
---|---|---|---|---|---|---|
災害拠点病院 (救命救急センター含む) |
29 | 5 | 0 | 1 | 35 | 82.9% |
上記以外 | 201 | 31 | 11 | 44 | 287 | 70.0% |
計 | 230 | 36 | 11 | 45 | 322 | 71.4% |
耐震性なし 5病院 (名古屋掖済会病院、海南病院、藤田保健衛生大学病院、中京病院、半田市立半田病院)
耐震化工事中 3病院(名古屋掖済会病院、海南病院、藤田保健衛生大学病院)
数年以内に耐震工事を行う予定 2病院(中京病院、半田市半田病院)
耐震性不明 1病院(新城市民病院) ※6月7日に一部建物に耐震性がないことを確認
一部建物を除き、新基準により建築 1病院(新城市民病院 ※耐震性が不明な建物に対する耐震診断を現在検討中。)
【資料】熊本地震・被災地視察の様子
2016年6月2日、すやま初美が熊本地震で大きな被害を受けた熊本県の益城町、西原市、熊本市内の被災現場へ視察に入りました。
(1)倒壊した家屋が残されている(熊本県益城町)
(2)屋根にブルーシートが掛けられた家が多く見られる(熊本県益城町)
(3)歩道にできた大きな段差を視察するすやま初美(熊本県益城町)
(4)山の斜面が崩れた現場を視察するすやま初美(熊本県益城町)
(5)ペットボトルやポリタンク、炊飯器などで場所取りがしてある避難所の駐車場(熊本県益城町)
(6)スーパーマーケットが倒壊し、商店街のアーケードが大きく損傷している(熊本市東区健軍商店街)
(※PDF版のダウンロード)