入社して1年たたずに
「かつては定年前の中高年の過労死が多かった。いまは若者が増えている」と、宮崎さんは話します。
厚生労働省の調査(2016年)で、過労でうつ病などの心の病を発症し労災認定された人は498人で過去最多。労災認定や自殺も若年労働者が増加しています。
宮崎さんは、「入社して1年もしないで、あっという間に若者が死んでしまう。ワタミの被災者は2カ月半です。大変な問題です」と心を痛めます。
ブラック企業は、大量に求人し、大量の離職者を出します。まさに若者の〝使い捨て〟です。
宮崎さんは、「若者は初めての職場でまともな教育や研修もなく、長時間労働とノルマ、パワーハラスメントを受けています。精神を病んでうつ病を発症し自死する事例が多発しています」と怒りを込めて訴えます。
運動が労災認定の力
愛知働くもののいのちと健康を守るセンター(愛知健康センター)は「遺族の立場に立って」相談を受けています。相談員は、無償・ボランティアです。
労働基準監督署から労災不認定とされた遺族、一審裁判で敗訴とされた遺族も相談に来ます。宮崎さんは「勝てる見込みがあるかではなく、どういう支援ができるかを第一に考える」と話します。
同センターの事務局員は、労働組合にも協力を要請します。支援する会を立ち上げ署名運動を起こし、マスコミにもアピール。過労死事件を扱う弁護団をつくります。
運動をつくり、世論を起こす中で新たな証拠や証言者がみつかることが多くあります。24歳で亡くなったスギヤマ薬品の事件では、被災者の兄がインターネット上に開設したブログをみた人が職場のひどさを次々と書き込んでいきました。運動が労災不認定の取り消し、逆転勝訴の力になりました。
宮崎さんは、同センターと遺族のたたかいをまとめた本を出版しました。
「若者のうつ病・自死事件が増えていることに危機感を持ちました。夫や子どもを失った遺族が勇気をもってたたかう中で、健康センターや過労死弁護団の支援を得て労災認定を勝ち取っていることを知らせたかった。若い人が過労死しないために役立てほしい」