5月25日、自民、公明両党は衆院厚生労働委員会で「働き方改革」一括法案を野党の抗議を押し切って強行採決し、同法案は自民、公明、維新などの賛成多数で可決されました。同法案は、高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ制度)を導入し、過労死ラインの残業を合法化するもの。雇用・労働条件改善を求める市民グループ・エキタス東海が同月23日、名古屋駅前でおこなった高度プロフェッショナル制度導入に反対する宣伝行動で、「名古屋過労死を考える家族の会」代表世話人の内野博子さんが過労死遺族として抗議の声をあげました。内野さんのスピーチの要旨を紹介します。
名古屋過労死を考える家族の会 内野博子さん訴え
2002年2月9日の早朝、自動車会社の工場で働いていた夫が職場で突然倒れ、そのまま亡くなりました。
夫の仕事は2交代勤務を1週間ごとに繰り返す不規則勤務で品質管理の担当者でした。何か不具合があるたびに後工程のほうから苦情を受け処理する立場でした。
いつもニコニコしている優しい人でしたが、残業が増えるにしたがって笑顔がなくなり、2001年当時は北米輸出が多くなって休日出勤や残業も増えました。また、非正規社員が増えたため、責任のある仕事が正社員に集中しました。
「自主活動」といわれていたカイゼン活動など様々な業務が同時進行で任され、頭が回らない状況でした。家族や友人は心配していましたが「仕方がない」と答え、ついに夜勤の朝、倒れて帰らぬ人になりました。
夫の残業時間は事前に決められており、追加の残業はほとんど認められませんでした。実際の残業は月144時間でしたが、その3分の1の46時間の残業しか管理されていなかったために、最初は労災の認定がされませんでした。
国を相手に行政訴訟を起こし、仕事の内容を証明したり、帰宅時間から逆算したり、大変な思いをして裁判に勝って労災を認めてもらうことができたのです。つまり、一般の労働者でも仕事の時間管理ができていないことが多い。高度プロフェッショナル制度で労働時間の規制がなくなると時間管理がされず、過労死をしても調査ができないということ。労災申請さえ難しくなるんです。
残業時間上限100時間未満は過労死の合法化です。残業上限は月45時間にしてほしい。 「働き方改革」という名称で国民を欺きながら、都合のいい法案を通す政府に怒りが湧いてきます。この法案は、労働時間を増やして残業代を減らそうとする過労死促進法です。希望ある未来のためにみんなで止めましょう。