温室が立ち並ぶ宮城県亘理(わたり)町の浜吉田いちご団地で栽培中の女性が語りました。
「夫婦でイチゴをやっています。震災前は、海岸沿いのビニールハウスで土耕栽培をしていました。津波の塩害でかん水用の地下水が使えなくなって、イチゴ団地に入りました。ここは水耕栽培です。夫は愛知にも見学に行ったんですよ。はじめは土耕のような甘みが出なくて。改良していまは甘みが強くなりました」
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愛知のボランティアは、仙台南部地方の名取市、岩沼市、亘理町、山元町で被災者支援にあたりました。「泥出し・片づけ、被災者のご用聞き、支援物資お届け」が主な仕事です。
地震・津波発生から数カ月後も余震が続き、海岸には毎日のように遺体が漂着していました。津波で沖に流された住民の遺体が故郷に帰ってきたのです。
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亘理町は人口3万4千余、震災犠牲者は約270人。イチゴ農園のビニールハウスは破壊され、農地は泥で埋まっていました。
ボランティアのみなさんは、スコップ、フォークを使い、一輪車を操り、イチゴ栽培用のビニールハウスの鉄パイプの解体、農地を埋めた泥やわらくずを運び出す作業に取り組みました。
その懸命な活動は農家を励ましました。「被害が大きすぎ、途方に暮れて一時は再建をあきらめたことも。しかしいまは、多くの人の支えに勇気づけられています」
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亘理町は、国からの復興交付金を活用し町内3カ所に大型園芸施設「亘理いちご団地」を造成。2013年から営農を再開しました。
いま、宮城県イチゴの販売額は震災前の9割に回復しています。
(林信敏)