大村秀章愛知県知事は2月20日開会の定例県議会に2018年度予算案を提出しました。大村県政2期目の最後となる当初予算案です。一般会計は2兆4940億円(前年度比1・1%減)。「中京大都市圏」「産業首都あいち」をトップに「観光あいちの推進」に重点配分し、大型開発と大企業応援が特徴です。「大企業がもうかれば、その恩恵がいずれは庶民のくらしに回る」というアベノミクスの愛知版で、教育・福祉は依然として全国最低クラスです。
大村知事は2011年の知事選で、自民党を離党して自身が代表の地域政党「日本一愛知の会」を立ち上げて当選。
15年の2期目の選挙では自民党にすりより、「リニア・ジェット・FCV(燃料電池自動車)」という、露骨な大企業応援の愛知版アベノミクスを公約に掲げました。しかし、その3大公約は矛盾を深めています。
リニア問題噴出
新年度予算案には、名古屋駅のスーパーターミナル化推進費などリニア新幹線関連事業費3000万円超を計上しました。
しかし、JR東海のリニア中央新幹線計画は、深刻な環境破壊に加え、ゼネコンによる巨額談合など重大問題が噴出しています。
ジェット不調
大村県政は航空宇宙産業の強化を図っています。三菱航空機(豊山町)の小牧南工場で組み立てている小型ジェット旅客機は5回も納入延期。2017年3月期決算で同社は赤字に陥りました。
県は17年度で県営名古屋空港内に小型ジェット旅客機用駐機場に6億円を投じました。
同工場では空自のF35戦闘機の最終組立作業がおこなわれており、軍需傾斜を強めています。
FCVゆきづまり
大村県政によるトヨタ自動車を頂点とする自動車産業応援政策もゆきづまっています。 FCVに不可欠なのは、燃料の水素を補給するステーション。水素ステーションの設置拡大に多額の県費を投入してきました。新年度予算案では整備促進事業費約6億793万円をつけました。
25年度末までの整備目標は100基。16年度末の実績は22基にとどまり、トヨタをはじめとする自動車業界はEV(電気自動車)化に向かっています。
大盤振る舞い
企業立地や再投資のために大盤振る舞いする補助の予算は約98億3600万円。17年6月から11月までに申請があった案件のうち補助の対象になったのは25件。大規模先端工場・研究所の立地を対象とする補助対象案件は1件でした。
常滑市中部空港島に建設中の国際展示場の整備費は約234億円。MICE(マイス=会議・セミナーや見本市)誘致推進事業は1442万円。観光振興の名のもとにおこなわれる大型開発です。
県は常滑へのカジノを含むIR(統合型リゾート)施設誘致を検討中。日本共産党県議団はカジノ誘致に反対。県民の反対運動が起きています。国会では4野党がカジノ推進法廃止法案を共同提出しました。
県民運動と共産党議員の論戦実る
福祉・教育分野では、県民の運動と日本共産党県議団の論戦が反映し前進しました。
県営住宅の特別会計の維持修繕費は50億2400万円。2014年度の37億6000万円に比べて12億6400万円の増です。
県立学校の長寿命化事業費32棟分、約2億7700万円と校舎の大規模改造費約17億6740万円が盛り込まれました。
特別支援学校の空調設備の設置費は約8億4000万円。工事284教室、設計255教室分です。トイレの洋式化は、工事40カ所、設計26カ所がおこなわれます。
瀬戸市内で建設中の知的障害特別支援学校の工事費約37億3000万円と、西尾市内に新設予定の知的障害と肢体不自由特別支援学校の基本設計費約8000万円が計上されました。軽度・中等度難聴児の補聴器購入助成費は約478万円盛り込まれました。子どもの貧困対策に6億4000万円が計上されました。
住宅全壊が10世帯未満の市町村の被災世帯の生活再建を支援するために市町村への補助制度が新設されます。支給額は1世帯あたり最大300万円です。