営利企業
2006年4月、応益負担を導入する障害者自立支援法が施行されました。「あたりまえに働き、えらべるくらし」という権利の実現よりも、金儲け優先の営利企業が参入するようになりました。A型事業所での解雇問題の本質はここにあるのではないでしょうか。
障害者自立支援法は、障害者総合支援法と名前を変えながら10年以上続いています。様々な形で複合的に全国各地に溜まっている矛盾の一つが「株式会社障害者支援機構」の大量解雇・給料未払いとして現れたのだと思います。
給付金・助成金
A型事業所を使った金儲けの仕組みは3つの収入です。
1つ目は、障害福祉サービスを提供することにともなう給付金(障がい者が1人1日利用すると約5000円)。
2つ目は、特定求職者雇用開発助成金(障がい者一人に対して最大3年間で240万円)。 3つ目は、障害者雇用調整助成金(100人以上の事業所において障害者を法定雇用率を超えて多数雇用した場合の助成金で毎年受け取ることが可能。㈱障害者支援機構は2017年度約1500万円受け取る予定でした)。最低賃金を稼ぐことが難しい仕事でも、賃金の補てんを行い、利益が事業者に残る仕組みでした。
県・市対応示せず
15年時点で、全国の就労継続支援A型の事業所数は3158。うち営利法人は1690(53・5%)、愛知県は事業所数が全国最多の230。名古屋市では17年4月現在、事業所数104、うち営利法人は89(85・5%)です。
厚生労働省や愛知県、名古屋市はA型事業所の大量解雇・給料未払い問題を、「特異な事案」と位置づけ、事業所の責任として終わりにしようとしています。厚労省は対応を自治体に丸投げし、愛知県・名古屋市は3年に一度の実地指導では対応困難としながら対策の方向を示し切れていません。
制度設計を
2つの対応が必要だと思います。
第1に、解雇された障がい者・職員のこれからの行き先を決めることと未払い給料問題を解決すること。
第2に、問題の本質・原因を明らかにして、再発防止策を行うことです。
厚労省はA型事業所において助成金から賃金の補てんを行っている事業所の実態調査をしています。各地で70―80%のA型事業所が助成金から賃金を補てんしている状況が明らかになりつつあります。
厚労省は、障害のある人たちの働く場、日中に活動する場に対する制度設計の抜本的解決を図るべきだと思います。その土台は、11年8月に同省の「障がい者制度改革推進会議総合福祉部会」が公表した「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」です。
(おわり)