10月の第48回総選挙は、支配層が安倍政権を維持するために〝総がかり〟で野党共闘を分断しようとした選挙でした。日本共産党は身をていして共闘を再構築し、改憲二大政党づくりの謀略を打破しました。石山淳一日本共産党愛知県書記長のリポートを紹介します。
改憲謀略打破 一本化へ大決断
2つの目標かかげ
わたしたちは今回の総選挙で、安倍自公政権を打倒するために、2つの目標を掲げてたたかいました。1つは、野党共闘を成功させ勝利をかちとること、2つは、日本共産党自身のさらなる躍進をかちとることです。
日本共産党の議席は改選時の21議席から12議席へと後退する痛恨の結果となりました。 比例東海ブロックも目標の3議席以上を果たせず、現有2議席から1議席へと後退しました。比例票は、前回の全国607万票から440万票に、愛知では30万8千票から21万8千票に後退しました。
みなさんの熱い支援をうけながら、それを結果に結びつけることができなかった原因は、私たちの力不足にあると考えています。 次の国政選挙では捲土(けんど)重来を期す決意です。
勇気持って共闘
日本共産党の議席後退は大変残念な結果でしたが、野党共闘では歴史的な意義をもつ大きな前進をきりひらいた選挙戦になったと確信しています。
民進党が安保法制容認・改憲推進の希望の党に合流するという野党共闘分断の逆流が、衆議院解散が決まった直後に突如おこりました。わたしたちは、民進党が自民党の補完勢力の「希望」に合流することは野党共闘を裏切る背信行為だと厳しく批判しました。
同時に、「希望」に合流しない人々や勢力とは勇気をもってしっかり共闘をすすめる決意を表明しました。
愛知では、1区、3区、5区で日本共産党、立憲民主党、社民党の野党3党と市民連合、市民と野党をつなぐ会あるいは市民アクションが政策協定を結び、協力・連携して選挙をたたかいました。
安保法制廃止 9条改憲阻止 3候補勝利 改憲2大政党化許さず
安倍政権は、森友・加計問題で追い詰められ、都議選の敗北で危機的事態に陥り、野党共闘が成功するなら、退陣に追い込まれかねない危機に直面していました。だから、野党共闘がととのっていないところで選挙に打って出るとともに、危機打開のために最大の脅威である野党共闘をつぶし、改憲の野望を果たすための政治体制を一気につくろうと、まさに〝クーデター〟としかいいようがない大掛かりな策動を仕掛けてきました。
都知事として注目されている小池百合子氏という改憲タカ派を使って、野党第1党の民進党を丸ごと改憲勢力につくりかえて野党共闘をつぶし、改憲勢力で与党と野党の2大政党体制をつくる大謀略でした。
小池氏自身は、いかにも安倍政権を打倒するかのようなポーズをとり、初の女性首相となるかのような期待を国民に抱かせながら、安倍政権の別動隊となって、連合を抱き込み、当選の見通しのたたない民進党に救いの手を差しのべるかのように装いながら、民進党を吸収して改憲政党に変質させるという役割を担いました。狙いは野党第1党を改憲政党にして2大政党体制をつくるということですから、小池氏は首相になる気などさらさらなかったのです。
身をていして野党共闘守った共産党
愛知においても私たち日本共産党は今回、民進党の希望の党への合流によって崩壊の危機にひんした野党共闘を救い出し、公示までの数日間のうちに野党共闘を再構築して選挙にのぞむために、ほんとうに身をていして努力、奮闘しました。
安倍首相は「国難突破解散」と銘打って解散を表明した9月25日、小池都知事が記者会見の最後に突如、安保法(戦争法)を容認し、9条を含む改憲を掲げる「希望の党」の立ち上げを表明したことで野党共闘つぶしのクーデター的策動が始まりました。翌日夜、神津連合会長、前原民進党代表、小池希望の党代表の3者で、野党第一党の民進党が希望の党に合流することが確認されてしまいました。
わたしは、「こんなことで野党共闘がつぶされていいのか」「このまま希望の党に合流したら自らの信念を捨てることになる」「希望に行かずに新党をつくることではだめなのか。希望に行かないのであればどんな支援もする覚悟でいる」と、関係者のみなさんとの話し合いにのぞみました。
立憲民主党の結党にいたる過程においても私たち日本共産党は、「新党を立ち上げてたたかうならば、私たちの候補者を降ろして支援する」と約束をして、立憲民主党の立ち上げを文字通り捨て身で後押ししました。
選挙協力というのは本来、相互協力、ギブアンドテイクでおこなうものです。しかし今回、私たちは野党共闘を守るために、得るものは抜きに、候補者を取り下げ、立憲民主党候補の当選のために全力で支援しました。
なぜ見返りもないのに、立憲民主党の候補者の当選のためにそこまでがんばったのか―やはり日本の民主主義を守るため、日本の未来を守るためでした。自らの利益だけでなく国民全体の幸せのためにがんばる党だからこそ、“見返りは民主主義”と身をていして野党共闘を守るために奮闘することができたと思います。
私は、この選挙で果たした日本共産党の奮闘は、日本の民主主義を危機から救い出し、日本の政治の新しい地平を切り開いたたたかいとして、将来にわたって語り継がれる歴史的意義をもつものと確信しています。
安倍改憲反対勢力 選挙前より強大に
日本共産党が身をていして野党共闘を危機から救い出して再構築し、前進・勝利をかちとる今回のとりくみは、民主主義破壊、憲法改悪をねらう謀略に立ち向かったたたかいでした。
その結果、野党共闘勢力が選挙前の38議席から69議席へと前進し、立憲民主党が野党第一党となったことで、改憲二大政党づくりの野望は打ち砕かれました。
リベラル派を「排除します」と独裁者ぶりを国民の前にさらした小池希望の党は、期待感が嫌悪感に変わって大失速。過半数に迫るどころか、改選前の57議席から50議席に惨敗しました。
大村愛知県知事は当初「三都物語」などと舞い上がり、希望の党顧問となって比例東海ブロックの名簿1位で国政に復帰することになっていました。ところが、同党の大失速に、選挙直前に逃亡するという惨めな姿をさらけだしました。河村たかし名古屋市長も結局、自らの立候補を断念するとともに、擁立した減税市議も惨敗する結果に終わりました。
自民党は公示前と同数の284議席を得ましたが、これは比例33%の得票率で61%の議席を占めるという小選挙区制のマジックによって得た虚構の多数でしかありません。
公明党と合わせて自公で3分の2の議席を得ましたが、改憲勢力で二大政党をつくるというねらいからすれば、今回の選挙結果は改憲戦略の練り直しが迫られるものになりました。
そして何よりも、「安倍政権のもとでの改憲反対」を明確にし、共産党との共闘を主張する立憲民主党が野党第一党になったことで、安倍政権は選挙前以上の脅威を感じているのは間違いありません。
今回の野党と市民の奮闘は、改憲勢力の謀略を打ち破った歴史的勝利だったといえると思います。
共闘前進へ強く大きな党づくり
今回の選挙を通じて、危機から民主主義、平和主義を守るというだけでなく、安倍自公政権とその補完勢力を少数においこみ、打倒していく、確かな条件、土台となる野党と市民の「本気の共闘」をつくりあげることができました。
愛知では、この1年、総選挙で野党共闘を前進させようと努力してきましたが、最後まで民進党愛知県連とは話し合うことができず、愛知だけは野党共闘はできないのかとあきらめかけたこともありました。
しかし、この選挙を通じて、どこよりも早く立憲民主党愛知県連が立ち上がり、日本共産党と県知事選挙や名古屋市長選挙もふくめて連携にむけた話し合いが始まっています。
野党間だけでなく、市民との共闘でも大きな前進がありました。 昨年の参院選では、「市民連合@愛知」は立憲野党の候補者と協定を結び、支援するというものでしたが、今回は日本共産党も含め政党とも協定を結び、比例代表選挙で立憲野党を支援することを打ち出しました。わたしたちに対しても「比例は日本共産党」と、様々な協力、支援をいただきました。これは、全国でも特筆される前進です。
市民と野党の共闘は総選挙では初の取り組みでしたが、多くの「共闘の絆」「連帯の絆」という財産を生み出し、今後に生きる大きな一歩を踏み出したことは間違いありません。
安倍政権打倒、野党連合政権実現をめざし、次の選挙では野党と市民の共闘をさらに発展させるとともに、強く大きな日本共産党づくりをすすめ、失った議席を回復し前進する決意です。
小選挙区共闘リポート
愛知1区(名古屋市東区、北区、西区、中区)
愛知1区では、立憲民主党の吉田統彦(つねひこ)氏が重複立候補の比例代表で復活当選しました。
日本共産党は、10月3日の吉田氏の立憲民主党入りの表明を受け、同区で立候補を予定していた大野宙光(ひろみつ)氏を取り下げ、吉田氏を支援することを決めました。
選挙中は吉田氏と比例代表単独で立候補した大野氏、市民連合@愛知の共同街宣がおこなわれました。
日本共産党名古屋北西地区委員会が10月28日に開いた
選挙報告会に吉田氏は出席。共産党の支援に謝意を述べました。
愛知1区には河村たかし名古屋市長の「減税日本」所属市議が希望の党公認で立候補しましたが、比例復活もできず落選しました。
愛知3区(名古屋市昭和区、天白区、緑区)
愛知3区では、立憲民主党の近藤昭一氏が自民、希望の両候補を抑えて当選しました。
同区で近藤氏と日本共産党は、3人の弁護士が呼びかけ人となった「みんなが主人公の政治をつくる市民アクション」を仲立ちにした〝ブリッジ協定〟を結びました。市民連合@愛知は近藤氏を支援しました。
愛知3区では、安保法制=戦争法廃止を求める運動を通じて、市民と野党の共闘が積み重ねられてきました。 民進党の希望の党への合流方針を受け、近藤氏は10月3日の朝に立憲民主党への参加を表明しました。
総選挙公示2日前の10月8日、緑区でおこなわれた集会に参加した近藤氏は、政策協定に〝手形〟で調印。全員で確認しました。
愛知5区(名古屋市中村区、中川区、清須市、北名古屋市、豊山町)
愛知5区では、立憲民主党から立候補した赤松広隆氏が自民、希望の候補を下して勝利しました。
日本共産党は同区に公認候補として月東(がっとう)義博氏の擁立を予定していましたが、野党一本化の方向を赤松氏側と話し合い、月東氏を取り下げました。
希望の党への民進党の合流方針に、月東氏は「希望の党は共闘の相手にならない」と赤松氏側に伝えました。市民連合@愛知のメンバーも独自に赤松氏に接触。赤松氏は「自分の考えを曲げてまで希望に行くつもりはない」と表明し、立憲民主党に参加しました。
10月6日、同党と日本共産党は、市民連合@愛知を仲立ちにして〝ブリッジ協定〟を結びました。
愛知4区(名古屋市熱田区、港区、南区、瑞穂区)
愛知4区では、9月末までは野党共闘で出馬することを明言していた民進党の現職議員が10月1日になって希望から出馬すると表明。昨年末から共闘を求めていた市民グループからの説得にも応じませんでした。
共闘の立場から独自候補の擁立を見合わせてきた日本共産党は急きょ、同党役員の西田とし子氏の立候補を決定。市民グループは10月7日、他の野党に出馬予定がないことを確認し西田氏推薦を決定。社民党、新社会党、緑の党も同意し、西田氏は「市民と立憲野党の共同候補」として確認されました。
個人演説会や街頭演説では社民、新社会、緑の各党幹部が応援。市民グループも独自の政策のぼりを持って街頭に立ちました。
志位さん強調 逆流止め共闘再構築の歴史的意義
日本共産党の志位和夫委員長は18日、刈谷市内でおこなわれた平和・民主・革新の日本をめざす全国の会(全国革新懇)の全国交流会で総選挙について、分断と逆流を止め、野党共闘を再構築した歴史的意義を語りました。
志位氏は、希望の党への民進党の突然の合流という市民と野党の共闘の分断にたいして日本共産党がとった、①希望の党が安保法制と9条改憲を容認する自民党の補完勢力であることを指摘し、民進党候補が希望の党の公認を受けた場合、原則として候補者を擁立する②共闘の道をしっかり追求しようという政党・議員・候補者とは連携・協力するという対応を報告。緊急事態のなかで全国67の小選挙区で日本共産党の候補者を降ろし、野党候補を一本化する決断をしたと述べました。
そのうえで、「いったん始めた道ですからとことんやり抜き、安倍政権を倒し、野党連合政権をつくる日までがんばりぬきます」と決意を表明しました。