愛知民報

【17.04.09】ハンセン病問題シンポジウム 各界の発言

 愛知民報社が協賛し、市民グループが3月20日に名古屋市内で開催した「ハンセン病問題から平和・人権・憲法を考えるシンポジウム」での、各界の参加者の発言を紹介します。

命の差別・選別は許さない 愛知県障害者(児)の 生活と権利を守る連絡協議会 上田 孝さん

 瀬古由起子さんのお話では民族浄化、小鹿美佐雄さんのお話では偏見・差別という根深い問題があることが提起されました。そして、元患者が高齢化する中療養所を完全に廃止することができないということを知りました。
 昨年7月に神奈川県相模原市の知的障がい者福祉施設で入所者が殺傷される事件が起きました。犯人は「障がい者なんていなくなればいい」「役に立たない人を生かしておく必要があるのか」という、いわゆる優生思想に影響された人物だといわれています。
 優生思想とは人間に優劣をつけ、命を差別選別する考え方です。ナチス・ドイツの主張です。民族浄化とイコールです。許すわけにはいきません。
 ハンセン病患者を療養所に強制収容する無らい県運動を進めた愛知県が、戦後障がい者を大規模施設に入所させる心身障害者コロニーを全国に先駆けてつくった歴史を直視する必要があります。
 県は、「施設から地域へ」と国の政策が転換されるなか、施設に入所している障がい者を地域生活に移行させてきました。しかし、地域の支援体制は極めてぜい弱です。県には特別な努力が求められていると思います。

優生思想による迫害 医師 矢?正一さん

 私は、内科医師の仕事をしてきました。医学生時代、ハンセン病については皮膚科の講義で習いました。しかし、愛知県にはハンセン病の療養所はなく、実際に患者に接する機会はありませんでした。最初に目の前で患者さんにお会いしたのは国立療養所栗生楽泉園の元患者、谺(こだま)雄二さんでした。
 私がなぜハンセン病に関心を持ったかというと優生思想です。強制隔離政策はナチスドイツのユダヤ人迫害と同じではないか。二度と起こってはいけない。
 今日の日本で新たなハンセン病患者が発生することはほとんどありません。必ず治る病気です。それでも病気に対する偏見、差別が生まれるということを心に留めておきたい。
 平和と人権をうたう日本国憲法の角度からあらためてハンセン病問題を考えたい。

まだ行き届いていない憲法 弁護士 大坂恭子さん

 私は、弁護士になって10年です。1998年に「らい予防法」違憲国家賠償請求訴訟が起きた時は大学1年でした。私は弁護団と知り合いになり、ハンセン病問題のことを勉強し、弁護士をめざしました。
 群馬県草津町の国立療養所栗生楽泉園にも通い、重監房という懲罰施設の跡も見てきました。
 人権侵害自体も隔離という一言では言えないような人間性否定の事実があり、一つひとつていねいに聞いていかないと受け止められないということがありました。
 本当に憲法が届かないというか、施行されただけでは全然行き届いていないんだと深く思いました。
 今は愛知県弁護士会でも駿河療養所に行く機会を設けたりしています。私自身の経験から療養所に足を運んで、その状況を見るということは大事だと思っています。
 療養所は、塀があるわけではなくてもしっかり隔離されています。私たちの子どもの世代にも実際に園を見せながら、人権を学ぶ機会を設けないといけないと思っています。