安倍自公政権は2014年に介護保険制度を大改悪する「医療・介護総合法」を強行しました。同法により4月から要支援1・2の人と窓口での基本チェックリストによる判定で該当した人は、ホームヘルパー(訪問介護)・デイサービス(通所介護)が介護保険制度から外され、市町村が実施する「新しい介護予防・日常生活支援総合事業(新総合事業)」に移されます。「自助・互助」を前提にした安上がりの仕組みづくりです。名古屋市は昨年6月から「新総合事業」を先行して実施していますが、利用者や事業者から不安の声が上がっています。
アンケートで
全日本年金者組合の名古屋市内支部協議会が昨年実施した「介護保険利用者・介護者アンケート」には、新総合事業への不安の声が寄せられています。
名古屋市西区に住む組合員は、「膝が痛くなって新総合事業の運動型通所サービスに6月から通い始めました。痛みが軽くなって喜んでいたら、『6カ月で終了』と言われて?卒業?させられました。症状が軽くなってもやめれば元に戻るし、自分で運動するのは難しいので、継続して利用できるようにしてほしい」といいます。
新総合事業では、介護保険の一律の基準を廃止し、市町村の裁量になります。名古屋市では、従来の介護保険サービスと同等の内容のサービスとともに、人員基準を緩和した通所サービスが提供されます。緩和されたサービスでは原則6カ月で「自立」となります。
訪問サービスでは従来のヘルパーに加え、3日間の名古屋日常生活支援研修を受けた人が生活支援に入るようになっています。
愛知県社会保障推進協議会が昨年11月、名古屋市内の訪問介護と通所介護の1281事業所を対象におこなった新総合事業の実施計画アンケートには、訪問介護170事業所、通所介護191事業所、双方実施する74事業所の計435事業所が回答を寄せました。
従来のサービスと同等内容で報酬が同額とされている事業には訪問188、通所220の事業所が参入しています。一方、報酬が低い基準を緩和したサービスでは訪問、通所ともに半数以上が「予定なし」あるいは無回答でした。
「総合事業を実施しない理由」では、「報酬減は経営が非常に厳しい」など採算面での不安が寄せられています。
専門職の支援こそ 愛知介護の会が講座
介護の充実を求める会愛知連絡会(愛知介護の会)は2月25日名古屋市内で、社会福祉・社会保障講座をおこないました。
同会の赤星俊一代表世話人が講演。同氏は生活に困窮した高齢者を直接支援した体験から、「支えあいやボランティアは大切だが、利用者の体調や生活の困窮を見極めることができる専門職の支援がもっと必要。介護の仕事は短期間の研修を終了すればできるような労務の提供ではありません」と強調しました。
従来のサービスに戻せ 日本共産党名古屋市議(財政福祉委員) 岡田ゆき子さん
新総合事業の問題の一つは、市が新たに低い介護報酬の設定をしたことです。党市議団がおこなった介護事業所アンケートでも、地域に密着した小規模事業所ほど要支援者を受け入れている割合が高く、「赤字」「安い給与でヘルパーを募集しても集まらない」ことが分かります。
もう一つは専門性を無視した人員の基準緩和です。「生活支援で何が重要か」の問いに、「生活全般の把握」「対象者・家族の状況把握」など職員は専門的な判断が求められます。
名古屋市が行った6月からのモデル事業の検証では、訪問サービスを担う3日間の研修を受けた人は739人。うち実際の雇用は96人(昨年10月時点)にとどまりました。低報酬のサービスを実際は専門職のヘルパーが担い、経営難に拍車をかけています。軽度者は安上がりでいいという発想ではなく、従来のサービスに戻し、重度化させない事業に切り替えるべきです。