“世界のトヨタ”が、「過労死ライン」とされる月80時間を上限とする残業協定に固執しています。労組側は、上限時間の引き下げを求めていますが、会社側は拒否しています。「これ以上働いたら死のリスクあり」とされる「過労死ライン」を無視する大企業のあり様は異常です。
青天井
労働者の健康と家庭生活を破壊する原因になっているのが長い残業(時間外労働)です。
トヨタの現場の残業時間は「青天井」と言われています。同社の堤工場に勤務し、2002年に過労死した内野健一さん(当時30歳)の場合、QCや創意工夫活動をふくめ死亡1カ月前の残業は106時間45分でした。
増える過労死
残業規制をもとめる世論と運動の高まりを受け、政府は1998年、「過重労働による健康障害を防止」するとして残業の限度時間を月45時間とする大臣告示を出しました。
ところが、県内に事業所をもつトヨタ、東レ、新日鉄住金という日本経団連の歴代会長の企業は大臣告示を守るどころか、「過労死ライン」の月80時間以上の残業協定を続けています。
全国の過労死・過労自殺の認定件数は1998年52件から2013年196件に、約4倍に増えています。
国会で追及
国会で、日本経団連の役員企業(上表)が過労死ライン超えの残業協定をもっていることを明らかにし、長時間労働の規制を主張したのは日本共産党の小池晃参院議員でした(2014年)。
現在、開会中の臨時国会の代表質問で、同党の志位和夫委員長は、「『残業は月45時間、年間360時間以内』という大臣告示を法定化する」ことを安倍首相に求めました。
残業代ゼロ
自民党に多額の政治献金を出す財界・大企業が安倍政権に求めているのが「残業代ゼロ法案」。「高度プロフェッショナル制度」の名で、どれだけ働いても残業代を払わなくてもいい仕組みの導入です。
日本共産党の市田忠義副委員長は9月29日の参院代表質問で、「残業代ゼロ法案」の撤回を迫りました。
いま、労働者の健康と家庭を破壊する長時間労働の実効ある規制を求める県民の運動が広がっています。
「ブラック」なくす
日本共産党愛知県委員会の、すやま初美若者雇用対策部長は「異常な長時間労働で若者を使いつぶすブラックな働かせ方の根絶に全力をあげます」と語っています。
36(サブロク)協定
労働基準法36条にもとづく時間外休日労働の労使協定。1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えて労働をさせる場合に必要。労働基準監督署に届ける。1998年の大臣告示(時間外労働の限度に関する基準)には、労使間で「特別条項付き協定」を結べば「月45時間」の限度時間を超えてもよいとする?抜け穴?もある。
「残業は月45時間まで」大臣告示の法定化を
愛知県労働組合総連合と愛知働くもののいのちと健康を守るセンターは1日名古屋市内で、労働安全衛生学校をおこないました。
佐々木昭三働くもののいのちと健康を守る全国センター理事が講演。「命にかかわる労災事故を根絶するには残業をなくすこと、雇用を安定化し、残業しなくても生活できる賃金を企業に支払わせることが必要」と述べました。
そのうえで、過労死遺族や支援者らの運動で2014年に成立した過労死等防止推進法と昨年閣議決定された「過労死防止大綱」の実効化を強調。「週60時間以上働く労働者をゼロにすることが大事」と力説しました。
事業者が労働者に無制限の残業を命じることができる36協定について、「月45時間の残業限度基準は大臣告示で法律ではない」と指摘し、一刻も早い法定化を訴えました。
愛知健康センターが冊子発行「人間らしく働く」
愛知健康センターはこのほど、過労死や業務災害にあった場合の対処法を、26年間の労災認定裁判支援の実例を踏まえて紹介する冊子を発行しました。本体定価1400円。同センター☎052(883)6966