JR東海が2027年度に品川―名古屋間の開業をめざすリニア中央新幹線のトンネル建設工事で発生する大量の残土の一部がガラスの原料を採掘する瀬戸市内の珪砂(けいしゃ)鉱山の埋め戻しに使われる計画が明らかになりました。9月21日、瀬戸市が同市議会の全員協議会に報告しました。今回、同市に運ばれるのは、春日井市の坂下非常口新設工事で発生する10万立方?の土砂。期間は来年初めから19年中ごろまで。ダンプカーの台数は最大で1日片道100台。運行時間帯は朝8時半から夕方5時。約5分に1台の計算です。交通渋滞、騒音、振動などの生活環境悪化が懸念されています。
片側1車線
本紙記者は9月24日、JRが明らかにした土砂搬入ルートを乗用車で試走しました。 春日井市内のルートはまだ明らかにされていませんが、坂下非常口の南に位置する東名高速道路春日井インターチェンジ付近から国道155号線を瀬戸方面に向かいました。
同線は片側1車線。春日井市内は主に市街地。ロードサイド型商業施設やマンションが立ち並んでいます。
「春日井リニアを問う会」事務局の川本正彦さんは、「国道155号線は、渋滞が頻発するルート。特に庄内川支流の内津(うつつ)川に架かる出川橋や庄内川を渡る新東谷橋は混雑します。ダンプカーが走ればもっと混みます」と指摘します。
春日井市と瀬戸市の境界付近は谷すじを走ります。カーブがきつく、見通しが悪いところもあります。
通学路が交差
愛知環状鉄道の中水野駅のすぐ北側で国道と分かれ、東にすすみます。周辺には住宅や商業施設、小学校、中学校、高等学校、瀬戸市役所水野支所、市民公園があります。
鉱山への搬入ルートは北側の企業団地を抜けたどんづまり。鉱山の南側は名鉄尾張瀬戸駅に近い建物が密集した地域。小高い丘のてっぺんにある窯神神社から「瀬戸のグランドキャニオン」と呼ばれる露天掘りの現場を遠望できます。
日本共産党の浅井ことみ瀬戸市議は「企業団地につながっており、交通量が多い道路です。水野小学校へ向かう通学路が交差しており、ダンプカーが増えれば交通事故が心配。渋滞を避けた車が周辺の生活道路にあふれる可能性もあります」と指摘します。
【リニア中央新幹線】 事業主体はJR東海。2027年に名古屋まで先行開業することをめざしている。超電導磁石で浮上させた車両で東京(品川)―名古屋間を最短40分で結ぶ。遠隔操作で運転士不在。他の路線と乗り入れることは構造上不可能。最高時速約500??。約86%がトンネルで車窓は望めない。消費電力は東海道新幹線の3―5倍。採算、安全、環境いずれも問題が多い。
安倍政権 公的資金3兆円 「全額JR負担」ウソ 赤字必至
安倍自公政権は9月26日開会の臨時国会に、リニア中央新幹線の大阪への延伸(45年)を8年前倒しするための財政投融資1・5兆円を盛り込んだ補正予算案を提出しました。来年度予定される1・5兆円を合わせると3兆円です。
国債の一種である財投債を発行して得た資金を独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構を通してJR東海に超低利で貸し付ける仕組み。
リニア中央新幹線は当初、9兆円の事業費を「全額JRが自己負担する」としていました。14年に国が認可した工事実施計画はJRの全額負担を前提とするものでした。
リニア中央新幹線は東京―名古屋間の86%がトンネル。大深度地下の工事や南アルプスを貫くトンネルの掘削などの難工事が予想されています。
JR東海の山田佳臣社長(現会長)は13年9月に「絶対にペイしない」と発言。採算がとれないことが明らかになっています。
9月23日には、沿線住民が工事実施計画の取り消しを求めた訴訟の第1回口頭弁論が東京地裁でおこなわれました。
日本共産党は採算面、安全面、環境面でも問題の多いリニア計画の撤回を要求。比例東海ブロック選出の本村伸子衆院議員(国土交通委員)らが臨時国会での論戦に挑みます。