大型インフラ整備を推進する安倍自公政権のもと、全国でダム計画が息を吹き返しています。2010年に「コンクリートから人へ」を掲げた民主党政権のもとで検証作業が始まった83の事業のうち、「継続」は46事業、「中止」は21事業、「検証中」が16事業です。揖斐川上流の徳山ダム(岐阜県揖斐川町)の水を引く木曽川水系連絡導水路事業は2015年に供用予定でしたが、いまだ「検証中」で工事着工にもいたっていません。導水路の事業主体は国の水資源機構です。同事業には毎年2億円を越す事務所経費が使われています。「導水路はいらない!愛知の会」の加藤伸久事務局長は「国、水資源機構は中止の決断をすべき」と主張しています。
公金支出正当化
木曽川水系連絡導水路事業をめぐり、住民グループが愛知県と愛知県企業庁長を相手取り、事業負担金318億円の支出差し止めを求めた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(大橋正春裁判長)は5月31日、住民側の上告を棄却する決定をしました。2審の名古屋高裁は昨年9月、住民側の請求を退けていました。大村秀章愛知県知事は最高裁の決定を受け、「極めて妥当な決定」というコメントを発表し、公金支出を正当化しました。
揖斐川から木曽川へ
導水路の事業主体は国の水資源機構。その「目的」は、?新規利水?異常渇水時の木曽川の流量維持。現在使い道のない徳山ダムの水を岐阜県揖斐川町で取水し、同岐阜市(長良川)と坂祝町(木曽川)に放流する延長43??の上流施設と岐阜県羽島市、海津市で長良川と木曽川を結ぶ約1??の下流施設が計画されています。
新規利水の内訳は愛知県の水道用水毎秒2・3?と名古屋市の水道用水毎秒1?、工業用水毎秒0・7?。合わせて毎秒4?を木曽川で取水するというもの。長良川河口堰の余り水を木曽川に流す役割もあります。
水需要減少
「導水路はいらない!愛知の会」が11日に名古屋市内で開いた上告棄却に抗議する集会で、在間正史弁護団長は、木曽川を水源とする名古屋市の水道について、「需要は減少を続けている。2014年の給水量は渇水だった94年の給水量を大きく下回っている。高裁判決は新規利水は不要という原告の指摘に沈黙した」と行政に追随する裁判所の対応を厳しく批判しました。
名古屋市の水源は、木曽川自流に加え、岩屋ダム(岐阜県下呂市)と木曽川大堰(稲沢市)により156万?が確保されています。1日最大使用量のピーク124万?(75年)を上回っています。
愛知県の愛知用水地域(尾張東部地域)では、木曽川の牧尾、阿木川、味噌川の3ダムが稼働しています。
流量維持根拠欠く
「異常渇水時の木曽川下流の流量の維持」は徳山ダムにある5300万?の「渇水対策容量」のうち、4000万?を導水するもの。国はヤマトシジミが生息できる限界の流量を木曽川大堰下流の成戸地点で毎秒50?と主張しましたが、裁判で原告側は、毎秒50?を下回った94年渇水でも生息していた事実を示しました。
水余り続く長良川河口堰 開門調査が焦点に
国の水資源機構が管理する長良川河口堰では、開門調査が大きな焦点です。
同堰は?水余り?です。水道用水では、全体で毎秒13・16?のうち、使用されているのは約3・59?です。
愛知県の水道用水2・86?は、名古屋港の海底を通る管(長良導水)を経由して、知多半島に給水されている分です。水資源機構中部支社のデータによれば、22日に長良導水から取水した量は毎秒1・74トンでした。
毎秒2?の名古屋市の水道用水、毎秒9・34?の工業用水は使われていません。
同堰の建設費は1493億円。うち利水分は934億円で、愛知、三重両県、名古屋市が負担しています。
愛知県知事が委嘱している「長良川河口堰最適運用検討委員会」は7月31日、水余りを断定し?プチ開門?を提言する冊子を発行しました。
同会委員の伊藤達也法政大学教授(地理学)は11日の集会で「国土交通省と水資源機構は開門に後ろ向き。市民・県民に味方がほしい」と訴えました。