名古屋市の河村たかし市長は「稼げる街」を掲げ、名古屋城の鉄筋コンクリート造りの現天守閣を解体し、木造で再建する計画を進めています。その内容は総工費504億円、2020年の東京オリンピックまでに完成させるという無謀なもの。日本共産党名古屋市議団は「急ぐべきではない」と現天守閣の耐震補強を含む長寿命化をすすめ、木造化は将来の市民に判断をゆだねること、城郭全体の魅力向上に努めることを提案しています。
河村市長は今月11日から15日まで市内5カ所でおこなった市民向け説明会で「耐震改修をしたとしても40年の寿命」と主張しました。
14日に日本共産党市議団がおこなったシンポジウムで一級建築士の滝井幹夫さんは「耐震改修とコンクリート劣化は別物。それぞれの方法で長寿命化できる」と指摘しました。
同党の江上博之市議は、鉄筋コンクリート造りで1933年に竣工した市役所本庁舎が耐震補強されて使い続けられていることを指摘。「あと数十年しか持たないという話は聞きません」と述べました。
江上さんは「鉄筋コンクリートによる再建には、『二度と焼失させない』という市民の思いが込められている」ともいいます。
旧天守閣は1945年5月、米軍の爆撃により焼失。1959年、市制70周年事業として再建されました。市民の戦後復興の思いの象徴でした。総事業費6億円のうち2億円が寄付でした。外観は測量図に基づき復元されています。木造化しても外観は変わりません。
名古屋市は今年3月、竹中工務店の提案を選定。同社が示した概算総事業費504億円を基に収支計画を試算しました。河村市長は、事業費について市債(借金)を発行し、入場料収入で40年かけて返済する方針を示しています。現在500円の入場料は「市内450円、市外1000円」に設定されています。市が示した入場者数見込みは年間最大446万人(2021年)。昨年入場した165万人の2・7倍です。
江上さんは、入場者予測について「入りきらずに入場制限が必要になる数字。計画通りにならなければ税金投入・市民負担につながる」と見ています。
河村市長は6月14日開会予定の定例市議会に、木造復元に向けた設計費・仮設工事費を盛り込んだ補正予算案を提出しようとしています。
シンポジウムでは「木造化に反対するよう議員に働きかけよう」と声が出ました。
緊急シンポジウム 日本共産党名古屋市議団
日本共産党名古屋市議団は14日、同市中区で名古屋城天守閣の木造化問題をテーマにシンポジウムをおこないました。参加者から「事業費が大幅に膨らむのでは」「コンクリートの天守閣は戦後復興の歴史遺産」などの危惧や意見が出ました。
市長候補経験者が市長あてに「熟慮」を要請
1989年から2009年までの名古屋市長選挙で候補者を経験した5氏は16日、河村市長が進める名古屋城天守閣木造化、議員報酬・定数削減などについて「熟慮」を要請する申し入れを市長あてに行いました。
申し入れたのは、竹内平、大島良満、うのていを、榑松佐一、太田義郎の各氏。
天守閣木造化について5氏は、「市民のくらしがないがしろにされている」「市長は行政の長であるとともに、市民の代表。自分のやりたいことを優先させるのではなく、市民がやってほしいことを優先させるべき」と指摘しています。