小牧市が進めていた新図書館について、昨年12月同市議会は、小牧駅西の「A街区」に建設する計画と指定管理者を導入する計画を白紙にしました。約50億円のばく大な事業費、DVDレンタル大手「ツタヤ」への運営丸投げなど市民不在の「ムダ・ハデ」の市政に市民から強い批判が寄せられた結果です。「市民のための公立図書館」を求める運動が広がっています。(本紙・村瀬和弘)
小牧市の図書館問題は、名鉄小牧駅西側の再開発事業と一体。 2011年の小牧市長選で当選した山下史守朗市長は、「賑わいと魅力ある中心市街地の形成を力強く推進する」と公約。14年、駅西に新図書館を建設し、運営を民間委託(指定管理)する方針を示しました。
市は指定管理者に図書館流通センターとカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)の共同事業体を選定。新図書館計画は閲覧スペースの手前にCCC子会社の「ツタヤ」書店を置くというもので、公立図書館の商業施設化でした。事業費は当初の30億円から50億円近くに膨れ上がりました。
「ツタヤ図書館方式」を批判する「小牧図書館を考える会」は昨年8月、新図書館計画の是非を問う住民投票を求める直接請求運動を展開。約6000名の署名を集めました。
市議会は住民投票条例を可決。住民投票の結果は賛成2万4981票、反対3万2352票で、「ノー」の審判がくだりました。同月30日、市長はCCCなどとの委託契約を解消しました。
市は、昨年8、9月に募集した市民意見(パブリックコメント)を公表。市民からは、直営での図書館運営を求める声や、駅前だけの?一点豪華?施設への批判、市内5カ所にある「図書館分室」拡充の提案や小牧駅西の再開発ビル「ラピオ」の空床活用を求める声などが寄せられています。
「考える会」の渡辺育代共同代表(65)は「図書館に求められる機能は郷土資料や専門書など資料を検索する機能。賑わいはそぐわない」と話します。
小牧市議会は2月8日、図書館の内容や立地場所を議論する新小牧市立図書館建設審議会を設置する条例案を可決。21人の委員のうち「4人程度」が公募されました。
翌9日、「考える会」と市長の面談が実現しましたが、市長は駅前開発に固執する姿勢を示しています。渡辺さんは「市民のための図書館を求めて運動します」と話しています。
「ムダ・ハデ」市政変える 日本共産党小牧市議団
日本共産党小牧市議団(3人)は議会で、社会教育施設の公共図書館を商業施設に変質させる「ツタヤ図書館」方式や事業費膨張などの問題点を明らかにし、新図書館建設計画の中止を求める論戦をおこなってきました。
住民投票と同時投票になった10月4日の同市議選(定数25、3減)で 同党の3候補は「ムダ・ハデ市政をやめよう」と訴え、広範な市民に共感が広がりました。日本共産党が現有3議席を確保し、投票を大きく伸ばしたことは、新図書館計画見直しの大きな力になりました。日本共産党小牧市議団は市議選後の新しい議会で「住民投票の結果を尊重せよ」と主張しました。
「図書館は知的貯蔵庫」
「小牧の図書館を考える会」が6日小牧市内で行った集会で、片山善博元鳥取県知事・元総務相が講演。同氏は公共図書館の役割について「地域の歴史、文化、伝統などを後世に伝えるための“知的貯蔵庫”として期待されている」と強調。蔵書の検索や管理業務を担う司書、学芸員などの人材育成を訴えました。