愛知民報

【16.01.24】安倍暴走 兵器開発軍学共同 資金 県内大学に

 戦争法を成立させた安倍政権は、自衛隊の海外派兵と武器の開発・輸出に向けて「軍学共同」「軍産学連携」をすすめています。かつてゼロ戦など兵器生産の拠点であり、今日、「ものづくり大県」の愛知がその拠点にされようとしています。科学技術の軍事利用に反対する研究者と市民の共同の運動がおきています。

化学戦に

 安倍政権が2015年度に競争的資金制度として創設した「安全保障技術研究推進制度」は、大学や研究機関、企業がおこなっている最先端の科学・技術を軍用に取り込むことが狙いです。防衛省は「最終的には兵器開発につなげる」と明言しています。
 研究資金は1件最高約3000万円。大学教員が自由に使える教育・研究費は多くの場合数十万円にすぎないなか、破格の高額です。
 15年度に防衛省側が設定した研究テーマに応募したのは、大学、公的研究機関、企業などから109件。9件が採択されました。
 国立豊橋技術科学大学の研究者がおこなっている「ナノファイバーによる有毒ガス吸着シートの開発」が採択されました。化学戦に使う防毒マスクへの活用が想定されていると見られています。

米軍資金

 米軍も日本の科学技術の軍事利用をもくろんでいます。ねらいは、軍事的覇権の強化です。
 共同通信社の調査によると、米軍は2000年以降、少なくとも日本国内の12の大学などの研究者に2億円を超える研究資金を提供していました。
 名城大学は、09年に250万円の米軍資金を受けています。
 米国の「連邦政府調達実績データーベース」によると、在日米軍と大学などとの研究契約は200件以上おこなわれ、04年には名古屋大学に5000ドルの米軍資金が渡っています。

兵糧攻め

 科学の軍事利用を批判する池内了(さとる)名古屋大学名誉教授は、大学側が軍事機関の要求に応じる背景の一つとして「研究者版『経済的徴兵制』」を指摘します。
 「経済的徴兵制」とは、子どもが貧困から抜け出すためにやむをえず軍隊に入る仕組み。その研究者版。大学や独立行政法人研究機関の予算が削減されるなか、研究費の困窮につけこみ、潤沢な研究費の提供で研究者を軍事研究に誘い込む仕掛け。いわば兵糧(ひょうろう)攻めです。

戦争法廃止を

 安倍政権がすすめる“軍学共同”は、憲法の平和原則にもとづき、平和と人類の福祉のために発展してきた日本の科学研究の存立の根本を破壊する重大問題です。
 安倍政権にたいし、憲法違反の戦争法廃止と一体に“軍学共同”の中止を迫る運動が求められています。
 ノーベル賞科学者の益川敏英名古屋大学名誉教授は、科学者の軍事動員の動きを警戒し、「科学者である前に、人類を愛する人間たれ」と呼びかけています。

学者・研究者が反対署名

“軍学共同”に反対する学者・研究者の運動が起きています。
 戦後、憲法9条のもと、侵略戦争への反省から日本学術会議は1950年4月、「戦争を目的とする科学の研究に絶対に従わない決意の表明」を発表しました。
 80年代後半には、各大学や研究機関で非核平和宣言の運動が広がりました。名古屋大学は「戦争を目的とする学問研究と教育には従わない」とする平和憲章(1987年)を定めました。
 大学・研究機関を武器開発・軍事研究にまきこむ「軍学共同」に反対する研究者らは2014年7月31日、「軍学共同反対アピール」を発表しました。
 昨年末現在、同アピールに1606人の賛同署名が集まっています。
 

“一億総軍事化”に警鐘 池内了(さとる)名古屋大名誉教授が講演

 
 原水爆禁止愛知県協議会や県平和委員会などが1月10日に開いた反核平和集会で、池内了(さとる)名古屋大学名誉教授(宇宙物理学)がおこなった講演の一部を紹介します。

 具体的な「軍学共同」の展開が始まったのは、2013年12月に閣議決定された2014年度防衛大綱。「大学や研究機関との連携の充実により、防衛にも応用可能な民生技術(デュアルユース)の積極的な活用に努める」とされました。
 防衛省は、具体的な戦略を組んで軍学共同を始めようとしています。防衛省先進技術推進センターのホームページには「ギブアンドテイクに配慮する」と書いてあります。
 テイクとは軍事研究のことです。ギブは「研究成果は可能な限り発表を認めなさい」ということです。防衛省は今のところ低姿勢ですが、自由度はすぐに閉じられます。
 研究者がお金だけとって基礎研究にまわすことは認められません。研究資金は成果物納入後に、前金なしの一括で支払われることになっています。
 契約書はすべて防衛省の書式です。なぜなら大学の書式を認めると、必ず「自由に発表できる」ことを要求されるからです。
 防衛省は個人研究者を一本釣りする制度を作りました。防衛省がテーマを提示し、研究者の提案が採択されたら委託するというものです。研究成果は防衛省所属のプログラム・オフィサーに管理され、研究者側に自由はありません。
 軍学共同は特定秘密保護法と一体です。防衛省が認めないまま、研究成果を公開したら情報漏えい罪で処罰されます。何を研究しているか言えないことは科学者としてむなしい。研究者に「研究をやめなさい」とは言えません。私は「秘密研究になるから、ひも付きのお金をもらってはダメ。科学者としての自己主張もできない」と言います。
 研究者は研究費不足で困窮しています。防衛省による資金供給は一種の経済的徴兵制です。