愛知民報

【15.11.01】JR東海 リニア用地の測量に着手 田畑つぶし「保守基地」建設 春日井市西尾町

日本共産党国会議員団が現地を調査

 JR東海は9兆円の事業費を投じ、リニア中央新幹線(東京・品川―名古屋間)の建設に向け用地買収や測量に着手しています。安倍政権はリニアを「国家プロジェクト」とする一方で、「公共事業ではなく民間の事業」という口実で説明を回避しています。日本共産党の本村伸子、畑野君枝の両衆院議員、辰巳孝太郎参院議員、すやま初美参院愛知選挙区予定候補は10月25日、春日井、名古屋両市のリニア建設予定地を視察、住民と懇談しました。
 

下流で洪水

 
 リニア新幹線は春日井市を南北に縦断します。全線地下で市内4カ所に建設機械やトンネルを掘削した土砂を搬出入する「非常口」(立坑)が設置されます。周辺住民はダンプカーの出入りによる騒音、振動や交通渋滞を心配しています。
 国土交通省が昨年認可した工事実施計画によると、JR東海は愛知・岐阜県境に近い同市西尾(さいお)町に「保守基地」を設置します。
 日本共産党の調査団は「春日井市リニアを問う会」の川本正彦さん、川地隆正農業委員らの案内で、内津(うつつ)川上流にある田畑が広がる同町を視察しました。
 川地さんは「造成・開発されれば、田畑の保水機能がなくなる。大雨が降ると下流で洪水が起きる」と危険性を指摘します。

県が肩代わり

 リニアは全線地下ですが、保守基地はリニア本線のトンネルの東側に分岐する枝線の先、地上に出たところに設置されます。
 川本正彦さんは目の前の山を指差して「ここがトンネル開口部」と説明しました。畑には、すでに測量の杭が打たれているところもありました。
 JRは用地買収の事務を県に委託。県は県土地開発公社に再委託しています。県は民間企業であるJRの土地買収を肩代わりしています。地権者の数は46人、買い取る面積は4万2000平方?、地権者に地代を支払う面積は2000平方?です。2020年度までの委託料は約7000万円。公社担当者によれば「ほとんど人件費」といいます。

陥没現場を視察 近隣住民「リニア工事やめて」

 調査団は同市出川(てがわ)町にある児童公園で今年3月に発生した陥没事故の現場を訪れました。現場では市による復旧工事が行われていました。
 同市の地下には戦前、戦中に燃料として掘削された亜炭(低質の石炭)の廃坑が残されています。日本共産党の伊藤建治市議は「地盤を安定させている地下水が抜けてしまえば大陥没につながる」と警告します。
 住民との懇談の席で、リニア通過点から20?のところに住む女性は「工事はやめてほしい」と訴えました。

リニア開発に暴走 愛知の大村県政

 愛知県の大村県政は「リニア中央新幹線の建設促進」を2016年度の国の施策に対する予算要望の45項目の筆頭に盛り込んでいます。
 リニアの整備は、大村県政が掲げる「リニアインパクトを生かし、世界に発信する中京大都市圏」づくりと一体です。名古屋駅を中心とする80??―100??の片道40分交通圏と首都圏をリニアで結び、愛知を「5000万人リニア大交流圏」の西の拠点にしようとしています。
 大村県政は、リニアを起爆剤に、西知多道路や名古屋環状2号線など広域幹線道路、中部国際空港の2本目滑走路、名古屋港の大水深岸壁など大型インフラ整備の早期事業化を国に働きかけています。 

工事認可「喜ばしい」 中部財界は建設推進

 中部財界はリニア中央新幹線の建設を促進する立場。愛知、岐阜、三重、長野、静岡にある約730社が加盟する中部経済連合会(中経連)は昨年10月、国土交通省がリニア中央新幹線の工事実施計画を認可したことを、「大変喜ばしい。工事が順調に進み、予定通り開業することを期待している」とする会長(三田敏雄中部電力相談役)談話を発表しています。
 建設促進を主張してきた名古屋商工会議所(名商)も「日本経済のさらなる発展・活性化に貢献するもの。我々経済界としては大きな期待を寄せている」という会長(岡谷篤一岡谷鋼機社長)談話を発表しています。
 名商は愛知県、名古屋市に対する2016年度予算要望で、名古屋駅に直結する高速道路の整備などリニア関連のインフラ整備を主張しています。