愛知民報

【15.10.18】亡国のTPP 「大筋合意」に怒り 

 日本の農業、食の安全、医療、経済主権をアメリカに売り渡すことになるTPP(環太平洋連携協定)交渉について「大筋合意」がされたと報じられました。「合意」内容は、「農林水産物の重要品目は除外する」とした2013年の国会決議違反であり、日本政府は国民を裏切る譲歩を重ねています。県内の各分野関係者から談話を寄せてもらいました。

どこの国の政府か 農民運動愛知県連合会(愛知農民連)事務局長 本多正一さん

 TPP大筋合意の内容の、想像を超える「売国」ぶりには驚くばかりです。国会決議に反する重要5品目の特別枠設定や関税削減はもちろん、それ以外の農水産品で半数の品目で関税がなくなるとは、まさに寝耳に水といった感じです。
 昨年から続く米価の暴落で、県内でも米作りをやめる農家が増えています。農民連は、再三「政府の買い入れで、需給調整をおこなえ」と要求してきましたが、回答は「出口対策は一切おのなわない」の一辺倒でした。
 ところが安倍内閣は、TPP対応として米の特別輸入枠の7万トン分は、新たに政府の買い入れを7万トン増やすといいます。国民・農民の要求には答えず、アメリカの要求にはすぐに対応する。どこの国の政府か疑いたくなります。
 引き続き広範な団体個人と共同して、TPP阻止に全力を尽くします。

医療費負担増える 愛知県保険医協会 副理事長 板津慶幸さん

 TPP交渉は大筋で合意したと発表されましたが、TVニュースでは「牛肉も米も安くなる」という内容ばかりで、いかにも「合意してよかった」と言わんばかりの報道に怒りが沸いてきました。
 国内の農業・畜産業が衰退していくことへの危惧、それと同時に関税外の分野である特許権など知的財産権や医療・保険への影響が今後大きくなってくると考えます。
 新薬で利益を得ようとする米日の大手製薬メーカーの意を受けて、新薬のデータ保護期間が長くなると、その間ジェネリック医薬品の製造・使用ができなくなり全体として医療費が増えてしまうでしょう。現在でも大変な患者の自己負担に更に大きく影響します。
 新しい手術や医療技術について知的財産権との関係から、公的医療保険制度への適用が阻害される危険性があります。ISD条項(投資家保護条項)によって、グローバル企業から「公的制度によって損害を受けた」と訴えられる可能性があるのです。
 TPPからは直ちに撤退することを要求します。

外国企業が政府を訴える TPPに反対する弁護士ネットワーク共同代表 岩月浩二さん

 ISDとは、外資が期待する利益が得られなかった場合に投資先の政府を海外の裁判に訴える制度です。非公開の密室裁判で、上訴の制度もなく、裁判官の多くはビジネス弁護士です。裁判官は、その件限りで選任され、判断を示すと解散し、国民には何の責任も負いません。
 環境規制や健康のための規制が訴えられることも多くあります。
 スウェーデンの電力会社はドイツの脱原発政策によって損害を被ったとして数千億円の賠償を求めてISD提訴しました。
 フィリップモリスは、オーストラリア政府の禁煙推進のためにタバコパッケージに制限を加えたことをISD提訴しました。
 民営化した水道を再度公営化してISDで多額な賠償を命じられた例もあります。TPPが発効すると、民営化された制度を公営化するためには外資に対して賠償しなければならなくなります。 
 自民党は、主権を侵害するISDは認めないと公約して政権を奪いました。主権侵害のISDが入ったTPPからは即時撤退すべきです。

愛知の農業(愛知県農林水産部資料より)

コメ:収穫量15万7000?、産出額310億円(2013年産作物統計ほか)

麦(小麦、大麦):生産量2万2300?、産出額7億円(2013年産作物統計ほか)

肉用牛:飼養頭数4万6700頭、1戸当たり118.2頭(2014年畜産統計)

:飼養頭数34万9900頭、1戸当たり1597.7頭(2014年畜産統計)

酪農(牛乳):飼養頭数2万8600頭、1戸当たり頭数76.7頭、生乳生産量19.8万?(2014年畜産統計、2013年牛乳乳製品統計)