愛知民報

【15.08.09】名古屋市で自由社、育鵬社版教科書不採択 侵略肯定の教育に「ノー」

 名古屋市教育委員会は7月29日、2016年度から4年間中学校で使用する教科書について、歴史は「教育出版」、公民は「東京書籍」と決定しました。侵略戦争を肯定・美化する育鵬社と自由社は採択されませんでした。この結果は、「戦争する国づくり」と一体に、歴史を偽造し、子どもの心を支配しようとする勢力に厳しい批判となりました。

軍国主義美化

 育鵬社版の歴史教科書は、アジア・太平洋戦争での日本軍の東南アジア占領について「東南アジアを植民地として支配してきた欧米諸国の軍隊は、開戦から半年でほとんどが日本軍によって破られました。この日本軍の勝利に、東南アジアやインドの人々は独立への希望を抱きました」と日本軍がアジア諸国の独立に貢献したかのように描いています。
 大日本帝国憲法については「天皇は実際には政治的権限を行使することなく」と記述。天皇が絶対的な権限を持っていた事実にほとんどふれていません。
 同憲法のもとで「自由が保障された」と書き、治安維持法などによる国民弾圧の事実を隠しています。

展示会で続々意見

 名古屋市教育委員会は6月7日、意見聴取をおこなうとして、公開のシンポジウムを開き、4人の教科書執筆者が発言しました。
 「南京事件はなかった」などと持論を展開するパネラーに対し、会場から「事実に反する」との反論も出されました。
 6月11日から7月5日に市内7カ所でおこなわれた教科書展示会では、市民からその内容に対する意見が市教委に集中されました。
 市教委事務局は本紙の取材に、「中学校教科書への意見は、前回の約5倍、1664通。その86%が『戦争を肯定する教科書は採択しないで』というものでした」と答えました。

教職員、学者、保護者が共同

「戦争を肯定する教科書」の採択を許さない運動は愛知県内でも粘り強くおこなわれてきました。教職員、研究者、児童・生徒の保護者など幅広い市民が参加する県民集会も開かれました。昨年10月の集会では俵義文・教科書ネット21事務局長が、歴史を偽り侵略戦争を美化する育鵬社、自由社の教科書採択を阻止する大運動を呼びかけました。

歴史逆行の右派勢力

 日本の侵略戦争と植民地支配を肯定・美化する教科書の?震源地?は安倍首相です。安倍氏は「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」に参加。自民党幹事長だった2004年は、侵略肯定の教科書採択に全力をあげるよう地方組織に通達しています。
 名古屋市の河村たかし市長も改憲右寄りの立場。12年2月中国・南京市の代表団に「南京事件はなかった」と発言し、同市の国際的信用が失墜。現在でも河村氏は発言撤回を拒否しています。

憲法生かす教育を 新日本婦人の会 愛知県本部会長 安藤満寿江さん

 私たちは若いお母さんたちといっしょに「戦争を美化するのではなく、平和憲法の精神を生かす歴史教育の実現を」と運動を広げました。
 教科書展示会へ足を運び、「育鵬社、自由社の教科書はふさわしくない」と意見を提出しました。教育委員会あての請願署名は3500人分集めました。
 自由社、育鵬社が不採択になったことにみんな喜んでいます。