イラクが「大量破壊兵器を保有」しているという偽りの口実でアメリカがおこしたイラク戦争。愛知県内に駐屯する陸上自衛隊第10師団と航空自衛隊小牧基地の輸送機部隊が「復興・後方支援」の名で現地に派遣されました。その実態は「純然たる軍事作戦」(自衛隊幹部)でした。しかし、自衛隊がイラクの市民を殺傷する直接の加害者にならなかったのは日本国憲法9条があったからです。いま、安倍政権は米国の要求に応え、戦争法制で9条の歯止めをはずそうとしています。
言論統制、テロ対象、市民に被害
―昨年7月に安倍政権が集団的自衛権の行使容認の閣議決定をおこなって以来、これに反対する国民的運動が広がっています。この1年どう見ていますか。
中谷 私の事務所に「今までデモに行ったことがないが何を持参したらよいか」などと問い合わせが殺到しています。安倍政権の暴走に対する怒りが広がっています。
戦争法案について、政府から国民へのまともな説明はありません。きちんと説明をするのは当然です。
―戦争法案をめぐる国会論戦では、イラク戦争の検証が議論になっています。イラク訴訟では空自の輸送活動に「違憲」の判断が示されました。もし、戦争法案が成立したらどうなりますか。
中谷 自衛隊が戦闘行為をおこない、一般市民を殺し、殺される危険にさらされます。サマワに陸自が復興支援の名目で派遣されたとき、戦闘現場は動くという前提で緩衝地域をつくりました。それでも大変危険な目に遭いました。
空自小牧基地所属のC130輸送機が輸送したのは、武装した米兵や多国籍軍の兵士でした。輸送先のバグダッドは空爆が繰り返されている戦闘地域です。高裁はこの輸送活動を重く見て、日本人はイラク戦争の加害者だと厳しく指摘し、違憲と判断しました。
―集団的自衛権行使が可能になると、小牧基地はどのような役割になりますか。
中谷 基地機能の強化は当然ありえます。さらに恐ろしいのは、基地がテロの対象とされることです。アメリカに攻撃された国から見れば、アメリカを軍事支援する日本は敵国です。愛知県には軍需産業が集中しています。工場が狙われる可能性もあります。
―特定秘密保護法が施行され、自民党内部から言論弾圧発言が出ました。秘密と戦争、ファシズムはセットと思われますが。
中谷 国民に知らせない、異論を許さない政治が進められようとしています。言論統制や警察などの権力による市民監視も強まります。
―弁護士会が「立憲主義守れ」の運動を展開していますね。
中谷 日弁連の理事会は全会一致で集団的自衛権に反対しました。立憲主義や憲法をないがしろにすることは、おかしいからです。立場を問いません。
―戦争法案阻止のたたかいとともに、憲法そのものの改悪を許さないたたかいが求められる情勢です。
中谷 若手弁護士が「憲法カフェ」などを開き、新しい層に護憲の運動を広げています。。世代を超えて、全国各地で学習し宣伝やデモに立ち上がることが大切です。長いたたかいになるでしょう。がんばりたいと思います。