愛知民報

【15.06.07】「子どもの貧困」解決を 学習支援と医療の家計負担軽減の取り組み

 「子どもの貧困」の解決をめざす市民の運動が広がっています。学習支援と医療の家計負担軽減の取り組みを紹介します。(本紙・村瀬和弘)

不登校を克服する例も 暮らしと法律を 結ぶホウネット 無料塾の経験を交流

 
 名古屋北法律事務所(名古屋市北区)の利用者友の会「暮らしと法律を結ぶホウネット」は5月30日名古屋市内で、生活困窮家庭の子どもの学習を支援する「無料塾」の取り組みを交流するシンポジウムを開きました。
 ホウネットは名古屋市北区内で開設者が異なる4つの無料塾を支援しています。北医療生活協同組合や北区社会福祉協議会などが名古屋市から受託した塾に学習サポーターの派遣や会場の提供を行っています。
 児童館の夜間開放「ナイト児童館」へのボランティア派遣や日本共産党名古屋北西地区委員会が主催する「中高生のための無料塾」を支援しています。
 シンポジウムでは県内の無料塾を支援する若者が発言。「アンビシャスネットワーク」(半田市)の田中嵩久さんは「不登校だった生徒が塾に通う習慣をつけるなかで学校に行けるようになった」、「NPOささしまサポートセンタースマイル」(名古屋市中村区)の山本崇代さんは「学習の援助だけでなく居場所づくりにも力を入れている。ボランティアの学生も成長できる」、ホウネットの鬼頭一歩さんは「無料塾に通い、人前で発言できなかった子が話せるようになった。うれしい」と語りました。

学びなおすシステムを

 さいたま市で学習支援事業に取り組む「さいたまユースサポートネット」の青砥恭さんがシンポジウムの基調報告を行いました。
 青砥さんは「この25年間の高校中退者は222万人を超える。その70%がアルバイトか無業者」という調査結果を紹介。「高校卒業、就労まで見届ける必要がある」と力説。 
 その上で、「学校教育からのドロップアウトを防ぎ、学び直しができる柔軟な公的システムの構築が必要」と指摘。奨学金など生活困窮家庭に対する制度の整備、現状の困難に対して必要とされる支援の把握、相談窓口の設置、学校との連携、財源の確保などの課題をあげました。 

虫歯の未治療深刻 医療費助成の拡大よびかけ

 
 愛知県保険医協会歯科部会や愛知県民主医療機関連合会などでつくる「保険でより良い歯科医療を」愛知連絡会は5月31日、名古屋市内で総会を開きました。
 講演した大阪府歯科保険医協会政策部長の戸井逸美さんは、2014年に同府の公立小中学校の養護教諭を対象に行ったアンケート結果を報告しました。学校歯科検診を受けた中学生3万4999人のうち、「要受診」と判断された生徒は1万1051人。うち受診した生徒は2866人、7割以上が未受診でした。
 戸井さんは回答した養護教諭のうち約4割が「経済的な理由による口腔崩壊(10本以上の虫歯)の事例に遭遇した」という調査結果を報告。「背景に貧困と虐待があるのでは」と述べました。
 戸井さんは、子ども医療費無料化の拡充や検診体制の強化、児童・生徒・保護者への啓蒙などの運動を呼びかけました。
 名古屋市内で開業する歯科医師から「大人になって初めて受診する人もいる。20代で噛み合わせが悪くなっている人もいる。親の労働時間の長さや金銭的負担が子どもの受診機会を奪っているのではないか」という発言がありました。