「国民保護訓練」 サリン想定
1月28日、名古屋市の瑞穂公園野球場で、国際テロリストが猛毒サリンを散布し、被害が発生したとの想定で「国民保護訓練」が実施されました。「海外で戦争する国」をめざす安倍政権のもと、テロ対策の名による、れっきとした戦争訓練です。被害者役に学生が動員されました。ことの本質は、かつて侵略戦争に学生を動員した「学徒出陣」と同じではないでしょうか。(村瀬和弘)
国民を強制動員する戦時立法
この訓練に参加したのは国、県、名古屋市のほか、警察、消防、陸上自衛隊、日本赤十字社など37機関から約500名。
負傷者役は医療関係の専門学校生でした。事件発生の第一報で学生らが次つぎと倒れます。自力で場外へ逃げる者、スタンドの通路で倒れこむ者、球場の外でうずくまる者など様々な被害状況がつくられました。
通報を受けて、まもなくパトカーと消防車が到着。ガスマスクと防護服姿の消防職員とと警察官が負傷者を担架に乗せました。
警察による爆発物処理や、自衛隊によるスタンドの除染訓練が行われました。
見学した名古屋市議から「事態の全容がわからない」という声が出ました。どういう国際関係のもとでテロが起きたのか、テロリストの正体や犯行の目的は不明、もしくは秘密です。被害対処だけが、自治体や市民を動員して実施されました。
2004年、小泉政権がつくった国民保護法(武力攻撃事態等における国民保護のための措置に関する法律)は、アメリカの戦争に日本国民を強制動員する法律です。
安倍政権のもと、同法にもとづく国民保護訓練は、国民の目、耳、口をふさぐ秘密保護法など戦時立法と一体に、「海外での戦争」に国民を動員する仕組みとして危険性があらわになっています。
<論考> 憲法生かす平和外交こそ 国民の安全守る道
安倍政権のもとで、サリンテロ対策として国民保護訓練が実施されたのは昨年の山形市に続き、今回の名古屋市で2回目である。
国民保護訓練は消防や警察が動くが、災害や犯罪の対策ではない。戦争対策である。
地下鉄サリン事件をきっかけに、サリンの製造や所持を禁止する法律ができた。サリンの取り締まりは同法で行うべきである。
安倍政権は、米軍と一体になった自衛隊の侵略軍化と国民の戦争動員態勢づくりをすすめている。地下鉄サリン事件への国民の不安に乗じて、「国民保護」の名で戦争体制をつくろうとしている。
安倍政権の「海外で戦争する国」路線こそ、国民を国際テロの危険にさらすものである。
憲法を生かす平和外交をつらぬくことこそ、戦争とテロを防ぎ、国民の安全を確保する最良の道である。(林信敏)