愛知民報

【13.07.14】安倍政権のゴマカシ 農業「所得倍増」計画 本多正一農民運動愛知県連合会事務局長

農家に回らない

 
 安倍政権は経済政策・アベノミクスの3本目の矢「成長戦略」で、農業・農村の「所得倍増」を打ち出しました。

 その柱の一つ目は、4500億円から1兆円への「輸出倍増」です。しかし、その50%が国産農産物をほとんど使わない加工食品であり、水産物と林産物が40%です。純然たる国産農産物は1000億円以下で農産物生産額のわずか1・2%にすぎません。

 もう一つは、農業生産と加工・流通を結びつける「6次産業」の市場規模を1兆円から10兆円に増やすことですが、農業食料関連産業生産額120兆円に比べれば微々たるものです。

 しかも最近目立つのは、大手流通加工企業の主導する6次産業化であり、利益は大手企業が独り占めして、農家にはまわりません。

 「成長戦略」は、米の生産コストを4割引き下げて1俵9000円台にすることを要求しています。これでは所得倍増どころか、農家の所得はゼロになってしまい、米を作り続けることはできません。

 さらに、農地の80%を大企業を含む担い手に集中させ、効率的営農体制を作るとしています。TPP(環太平洋連携協定)加入に備え、国際競争力をつけることを口実に、農地を農家から取り上げ、大企業に集中させることが狙いです。

 アベノミクスの円安で、全国の農業先進地域といわれている愛知県の渥美半島でも、畜産農家は「飼料高騰とTPPで先行きが見えず廃業を考えている」、電照菊や観葉植物を作る施設園芸農家は「燃料高と販売不振で、今のままでは経営が成り立たない」という声が広がっています。

 安倍政権の所得倍増計画は「農家所得」ではなく「農業・農村の所得」。その本質は、農業を大企業などのビジネスチャンスにすることです。農家や地域経済のプラスにはなりません。

 自民党は昨年総選挙で「TPP断固反対」、今度の参議院選挙では「所得倍増」―。こんなゴマカシにはもうだまされません。

 今、TPPに反対する国民運動が、私たち農民連やJA、医療、消費者団体の大きな共同に発展しています。そしてこの運動を励ましTPP加入反対の先頭に立つ日本共産党への信頼が高まり、共産党候補者を推薦するJAも生まれています。

 TPP問題は参議院選挙の大きな争点です。日本共産党の躍進を期待します。