愛知民報

【13.06.30】“学びたい”“自立したい”学生と市民が解決へ共同 

 高い学費、利子付奨学金、就職難、非正規雇用、ブラック企業、うつ病……。若者の「学びたい」「働きたい」「自立したい」という切実な要求に対し、数々の困難が立ちはだかっています。これを解決する取り組みを、学生と市民が共同して始めています。(本紙・村瀬和弘)

「月10万円 払えない」 奨学金滞納3人に1人

 
 深刻化する奨学金返済困難者の救済と制度改善を求め、全国の弁護士や司法書士、大学や高校の教員らでつくる「奨学金問題対策全国会議」が9日、名古屋市で開いたシンポジウムに約200人が集まりました。ほぼ半数が現役の学生です。

 「月10万円、返済総額約645万円、返済期間20年の有利子奨学金、あなたなら借りますか」のテーマでは、現実を正面から見つめる発言がありました。

 「利子が怖い。返し終わるまでちゃんと仕事と収入があるのか」「学生を助けるはずの奨学金なのに、結局は学生を苦しめている…」

 多額の奨学金を借りている学生の発言も続きました。

 「奨学金借り入れは、大学進学をするときの親の条件だった。受けている奨学金は月5万4000円」「月8万円借りている。3人姉妹の真ん中で、姉と年子。中学生のときから借りて進学するのは前提」「利子があることを知ってはいたが、数字は知らずにいた。後悔している」「大学の学費は自分で稼いで返せと、親が月10万円借りることを決めた」「月10万円借りている。就職できないで自殺する人がいるのに、後輩に勧めたいとは思わない」

 2010年の奨学金貸与率は50%以上、12年の有利子奨学金貸与者96万人、滞納者33万人、34歳以下の非正規雇用率が男性42・7%、女性51・4%などのデータをもとに、「私たちにできること」を出し合いました。

 「給付型の奨学金があるべきだ。そもそも高等教育は無償化すべき」「教育と雇用の問題に力を入れて悪循環を改善することが大切だ」「大学を卒業したら就職できるのが当たり前のはずなのに、国は学生のやる気をそぐ気なのか」といった意見が出されました。

 大内裕和中京大学教授は「裁判所から支払督促を受けた人が11年だけで1万件。返済の困難さが大学卒業後の人生を左右している」と述べ、5年の返済猶予上限の撤廃、延滞金の廃止、給付制奨学金の導入など制度改善を訴えました。

放置できぬブラック企業 有名企業まで広がる

 
 「ブラック企業」とは、新卒の若者を大量採用し、長時間・過密労働、パワーハラスメントなどで精神的に追い詰めて大量退職に追い込む会社のこと。

 ブラック企業が広がる土壌に、労働法制の規制緩和で非正規雇用が広がり、?代わりはいくらでもいる?と過酷な競争に駆り立てる仕組みがあります。

 安倍内閣は「成長戦略」の名で労働法制改悪をねらっています。5月14日の参院予算委員会で、日本共産党の山下芳生議員が「ユニクロ」の事例で追及するなど、有名企業まで「ブラック企業」が広がっています。

 愛知県労働組合総連合(愛労連)などが8日に名古屋市で開いたブラック企業に関する学習会で、森弘典弁護士が講演しました。

 「給与を前借りしたら、出資法違反の高利率をかけられた」などの相談事例を紹介し、「ブラック企業の被害にあったのはほとんど若者だった。社員を監禁した経営者が逮捕された事例もある。ブラック企業の情報を公開させることが必要」と述べました。