安倍政権の改憲動向や自民党「憲法改正草案」の見方、改憲阻止の運動方向を考えるシンポジウムが8日、名古屋市で開かれました。平和・民主・革新の日本をめざす愛知の会(革新・愛知の会)が主催。
パネリストは元東京・中日新聞論説委員の飯室勝彦氏、元自民党愛知県議の梅村忠直弁護士、名古屋大学の本秀紀教授。小林武・沖縄大学客員教授がコーディネーターをつとめました。
9条改憲を 容易にする
安倍首相が主張し、自民、維新、みんなの各党が同調する憲法第96条の改憲発議要件の緩和。梅村氏は「憲法に対する冒とくだ。最高法規である憲法は安定していることが重要。憲法を改正する場合は、現行の衆参両院の3分の2以上による発議を前提に、慎重に国会審議して発議すべきだ」ときびしく批判しました。
本氏は、96条改定は9条などの改憲を容易にするねらいがあると指摘した上で「96条改定の主張は基本的人権を守るために国家権力を縛る立憲主義に対する無理解だ。ほとんどの国の憲法で改憲ハードルは高く、過半数で変えられるようにはなっていない」と述べました。
自民草案は 歴史の逆行
自民党が決定した日本国憲法改正草案に、きびしい批判が続きました。
飯室氏は「草案からは明治時代に逆戻りする国家像が浮かび上がってくる。天皇の問題で前文は『天皇を戴く国家』、第1条は『元首』と書き、憲法尊重義務は天皇ではなく国民に課している。明治憲法の復活そのものだ」と指摘しました。
梅村氏は「現在の憲法は恒久平和と国民主権を?人類普遍の原理?として、これに反する憲法を排除している。『前文』を書き換えて天皇を元首とし、『国防軍』を創設するのは改憲ではなく、現憲法を破棄して自主憲法に変えるものだ」と力説しました。
本氏は「自民党草案は国民の権利を『公益及び公の秩序』に反しない範囲にとどめ、表現の自由も結社の自由も制限して国民をしばり、憲法の性格を変えるもの」と強調。また「自民党がいま準備している国家安全基本法案は海外で軍事行使ができるもので、憲法9条がないに等しい状況をつくろうとしている」と述べました。
徹底した議論を 小林氏よびかけ
小林氏は討論のまとめで、「安倍首相の96条改定発言を通じて、多くの国民が憲法の柱、立憲主義の意義を理解するようになり、『憲法96条の会』発足など、これを許さない世論が広がっている」と指摘。
一方で、橋下徹大阪市長の発言は特殊なものではなく、安倍内閣、自民、維新、みんなが一緒になって歴史を逆行させる動きが強まっていることに注意を喚起しました。
自民党草案を読んだ女性から「息子が兵隊に取られるのですか」と質問されたエピソードを語り、「この草案を徹底して議論することが大切だ」と強調しました。