愛知民報

【13.06.16】設楽ダム建設事業計画 大村知事 回答保留の背景 市野和夫(設楽ダムの建設中止を求める会)

くずれた建設根拠

 
 大村秀章愛知県知事は5月、設楽ダム建設事業計画に賛否の回答を保留しました。

 国土交通省中部地方整備局は、2月の関係地方自治体からなる検討の場に、設楽ダム現行計画が最も優れているとの素案を提示。大方の了解を得て事業継続の原案をまとめ、愛知県知事に提示して意見を求めました。

 これに対し、大村知事は回答を保留し、記者会見で「大きな出費を伴う事業であり費用対効果の議論が必要」との見解を示しました。

 私たち「設楽ダムの建設中止を求める会」は2007年4月以来、愛知県知事らを相手に「設楽ダム建設事業への公金支出は違法である」として、住民訴訟を起こし、ダム建設の問題点を明らかにしてきました。

 1審、2審ともに「公金支出は違法とまでは言えない」とし、訴えを棄却しました。しかし、行政追随姿勢のあらわな裁判所でさえ、水需要予測は実績に比べて相当高めに設定されていることを認めざるを得ませんでした。

 さらに、この間、東三河地域の水供給態勢が整って新たな水資源開発の必要がないことが、事実によって証明されました。

 すなわち、豊川総合用水事業(02年完成)が運用されるようになった03年度以降、それまで毎年のように行われた豊川用水の取水制限がなくなり、無節水期間が06年4月から2600日を超えて途切れることなく続いています。

 なお、05年度に109日の取水制限(給水圧調節)が行われましたが、05年は観測史上最少雨量を記録した特別な年でした。特定多目的ダムである設楽ダムは、愛知県水道用水の水源確保の必要がないので、建設の根拠を失っています。

 では、設楽ダム建設計画は地域振興に役立つのか。ダム予定地の設楽町をはじめ、東三河山間地では、高齢化と人口減少に悩んでいます。ダム建設は問題の解決につながるどころか、人口流出に拍車をかけているのです。

 社会の衰退をもたらし、豊川の清流と豊かな三河湾の環境を壊すダム建設を止めて、森と清流を活かした山間地域の振興を進めることこそ住民の願いです。

 地域主権をかかげる大村知事は、設楽ダム事業について、県独自に検証する姿勢を明らかにしています。そして、設楽ダム連続公開講座を開いて、県民勉強会に取り組んでいます。その検証を終える前に、知事が国に対して回答できるはずはありません。