愛知県と名古屋市は7月30日、大村秀章知事と河村たかし市長が「県も市も廃止して、合体して新たな自治体をつくる」と合意したことを公表しました。
おそるべき暴走です。743万県民、226万市民の暮らしを預かる愛知県と名古屋市という地方自治体の廃止を、議会にも県民・市民にもはからずに、知事と市長が“密室会談”で合意したのです。
公約違反
「中京都構想」は2011年の知事・名古屋市長ダブル選での大村・河村両氏の共同公約でした。しかし、「県・市廃止」は明言していませんでした。「名古屋市と愛知県で司令塔を一つに 二重行政による名古屋市と愛知県の無駄を省きます」――これが河村氏の選挙公報です。今回の合意は公約違反です。
道州制
愛知県の廃止は道州制導入を前提にしています。道州制は全国47都道府県を10前後の道と州に統合するものです。名古屋市の廃止は、今の延長通常国会での大都市地域特別区設置法の成立を見越しているようです。
特別区設置法は、名古屋市を廃止し、16行政区と周辺市町村をいくつかの「特別区」に再編することを可能にする法律です。
道州制も特別区も住民福祉の増進を基本任務とする自治体の破壊という点で同じです。
福祉犠牲と増税
道州制と特別区設置のねらいは同じです。地方自治体の財源を、港湾・空港・高速道路、リニア新幹線など大企業支援の大型開発事業に集中する仕組みをつくることです。
その財源は、自治体の福祉・生活支援予算の徹底的削減と地方税の増税です。
民自公3党の消費税増税のねらいは、社会保障充実でなく、公共事業拡大の財源確保でした。その地方版が橋下・維新の会の「消費税の地方税化」です。
日本経済新聞は「維新八策は消費増税を事実上“公約”にしているのだ」「国が増税しないだけで、自治体による増税を制度の大前提としているのが真相」(7月22日付)と指摘しています。
反動的逆流
橋下、大村、河村氏らは主導権争いを演じながら、新自由主義派や靖国派をかき集め、自民党や民主党の政権が国民の抵抗でなしえていない、大企業本位の道州制導入や強権政治体制、軍事大国化のための憲法改悪という反動的な流れをおこそうとしています。