愛知民報

【12.05.13】名古屋市の最近の文化行政について 愛知文化団体連絡会議代表委員・劇作家 栗木英章

大型事業にのみ財源 ?草の根?文化・芸術に冷淡

 河村たかし名古屋市長の「南京虐殺はなかった」という歴史的事実を無視する発言に、多くの人々が怒りの声をあげています。

 河村市長と、大阪市の橋下徹市長や東京都の石原慎太郎知事に共通するのは、その反動的行政がとくに福祉・教育・文化に向けられていることです。

 名古屋市では、市民会館の名称が中京大学文化市民会館に、7月からは日本特殊陶業市民会館に変わります。厚生年金会館と鶴舞の勤労会館が閉鎖され、さらに、一方的な「事業仕分け」で利用率の高い女性会館まで廃館の方向が発表されました。

 市民の楽しみの一つである市民芸術祭も、今年度予算は600万円でピーク時の8%にすぎません。劇場型の主催事業はすべて休止となりました(「中日」3月22日)

 昨年の主催事業から生まれた合唱オペラ『トラジコメディ・盗まれた森』が7月の東京公演へ向けて準備されていますが、こういう発展の芽も摘まれることにつながります。

 数年前から市は「憲法9条にふれる文化企画への後援名義拒否」を続け、強い批判を受けながらも完全には改めていません。

 これらの文化行政は、市民の楽しみ、人生の応援歌としての文化運動の継続を困難に追いやっています。

 予算が突出しているのは「あいちトリエンナーレ2013」の市負担分で、3倍増の4018万円です。県も市も大型事業にのみ財源を注ぎ込み、地元でコツコツ努力している文化・芸術団体とそれを楽しむ市民にはきわめて冷淡で、かろうじて続いていたメモリアル企画への助成も打ち
切りました。

 私の所属する劇団名芸も創立50周年を迎えて、地域の文化活動史としてその歩みを記録誌に残そうと、助成を一つの拠り所として準備しつつありましたが、中身を縮小せざるを得ません。

 そんな中で、愛知文化団体連絡会議は文化団体の諸要求を「基本的な共同要求事項」にまとめ、当局との話し合いをすすめようとしています。女性会館の存続を目指す市民グループは、利用者を先頭に「廃館反対署名」を集めて、シンポジウムを計画中です。

 文化を楽しむ市民と幅広い文化・芸術団体が力を合わせて、地元の文化運動が前進するようがんばります。