愛知民報

【12.04.15】寄稿 願い踏みにじる“骨抜き”派遣法 日本共産党愛知県委員会労働部長 植田和男

人間の“モノ”扱い許さない 

 3月28日、労働者派遣法改定案が民主、自民、公明の賛成で成立しました。この改定法は、?人間らしく働きたい?という労働者の願いを踏みにじる骨抜き派遣法です。

 民主党政府が派遣法改定案を国会に提出したのは2年前。労働者を使い捨てる派遣労働の規制を求める世論に押され、「製造業・登録型派遣を原則禁止」としましたが、派遣元に常用雇用されているケースや専門26業務派遣を対象外とするなど、規制効果がないに等しい内容でした。

 そのうえ、政府・民主党は昨年11月、自民、公明と取引して「原則禁止」条項さえ削除し、原則自由としてしまいました。違法派遣があった場合に、派遣先が労働者に直接雇用を申し込んだとみなす規定は実施が3年後に先送りされました。

 安定した雇用をもとめる国民の声に背を向け、総選挙の公約を投げ捨てた派遣法改定は許せません。

 そもそも人間をモノ扱いする「派遣」という雇用形態はあってはならないことです。1947年制定の職業安定法では、戦前まで行われていた「人身売買」への反省から、「労働者供給事業」を厳しく規制しました。

 ところが自民党政権は、財界の強い要望に応えて85年に派遣労働を認める「派遣法」をつくって改悪を繰り返し、さまざまな規制をなくしてきました。

 今回の改定もその延長線上のものです。派遣法は「派遣労働者保護法」として抜本改正が必要です。

 愛知県は、トヨタとその関連企業など製造業が盛んで労働者の多い県です。そのため、08年のリーマンショックでは、他県にない大規模な雇い止めが広がりました。

 今も派遣労働など不安定雇用をめぐる多くのたたかいが続いています。派遣先への正規雇用を実現したり、裁判で勝利的な「和解」をかちとった労働者が生まれています。全労連・全国一般労働組合の名古屋北部青年ユニオンの労働者は、三菱電機の「派遣切り」を裁判に訴え、一審では「派遣先の責任」を明記した判決が下されました。

 骨抜き派遣法が成立した日、大震災被災地の宮城県多賀城市で、ソニー労組は震災を口実に期間社員を雇い止めしたソニーと、その撤回を求めて団体交渉を行いました。そして「期間社員が再就職で正規雇用に転換できるまで会社が責任を持つ」との合意をかちとりました。

 日本共産党は、労働者のたたかいに連帯し要求実現と権利拡大に力をつくしています。同時に、ヨーロッパでは「同一労働同一賃金」「雇用は正社員」が常識であるように、日本でも「ルールある経済社会」の実現をめざしています。労働者の多い愛知県でこそ、このたたかいを前進させる決意です。