愛知県の私立高校で、日本が起こした侵略戦争と加害の実相を学ぶ取り組みが行われています。
名古屋市中村区にある私立同朋高校教員の宮城道良さんと元日本軍兵士の近藤一さん(92)は昨年9月、『最前線兵士が見た中国戦線・沖縄戦の実相~加害兵士にさせられた下級兵士』(学習の友社)を刊行。近藤さんの戦場証言と、これを教育に生かす宮城さんの実践を紹介しています。
今月10日に同朋高校で行われた愛知県私学協会社会科研究会の研修会で、「戦争加害をどう教えるか」をテーマに両氏が講演。県内各地から参加した教員が学びあいました。
「まさに殺人鬼でした」
近藤さんは、中国の戦場で数十人を殺傷しました。
「中国人はチャンコロで豚以下だという教育を受けて育ち、罪の意識はなかった。『神国日本』体制下で教育され、人間性をなくしていました」
初年兵教育で捕虜を処刑させられ、捕虜の首切り実験や強姦・略奪、女・子どもも殺せと命じられ、「日本兵はまさに殺人鬼でした」と振り返ります。
1944年8月から沖縄戦に転戦。ここでは、軍上層部から「虫けら以下に捨てられた」体験をしました。
?鉄の暴風?と呼ばれた米軍の大規模な砲爆撃のなかで、爆弾を背負って米軍戦車の胴体の下に飛び込む“肉弾攻撃”が行われました。
「戦陣訓で降伏してはならないので、最後の突撃で銃剣を振りかざして死ぬしかなかった」と近藤さん。
講演の最後に、教員に語りかけました。
「我々が経験した本当のことを伝えなければ、歴史を教えることにはならない。みなさんもこのことを頭において平和を語り、憲法9条を守り抜く国にしてほしい」
「認識を深める力」
宮城さんは、近藤さんの証言を授業に生かす目的を、「侵略軍兵士はある意味?加害をさせられた被害者?だったのではないか。年号や重要語句だけでなく、戦争の一番の被害者は誰だったのか、60%の兵士が飢餓で野垂れ死んだことなどを考えて社会認識を深める。これを?本当の学力?にしたい」と話しました。
宮城さんは、アジア・太平洋戦争と戦争責任の解説、侵略戦争を証言した映画の鑑賞、近藤さんの証言録や研究論文黙読などを高校生に行っていることを紹介しました。