愛知民報

【11.10.16】愛知の空港問題2 林信敏元県議に聞く 2本目滑走路 浪費と環境悪化に

二の舞に

 ――中部空港の2本目滑走路の内容は。

 現在の滑走路に並行する形で350メートル沖合に3500メートルの滑走路をもう1本つくる構想です。滑走路の建設費は1200億円。空港島の南側部分の埋め立てと合わせた総事業費は1500―1700億円。伊勢湾の環境悪化は必至です。

 ――航空関係者はどう見ているか。

 「私たちパイロットは、中部空港の現状から、今後の需要予測、人口減少傾向から、なぜ莫大な資金を投入して、もう一本滑走路を造る必要があるのか理解できない」「地元財界や政界の思惑だけが見え隠れする」。これは2008年7月に日本航空機長組合が発表した批判声明です。

 ――関西国際空港の2本目滑走路の効果は。

 関空の2本目滑走路は2007年8月に供用開始されました。その後、着陸回数、旅客数とも減少傾向です。

 関空会社は1兆3千億円の借金をかかえ、政府補給金でつないでいる危機的状態です。
2本目滑走路は無謀だという日本共産党の批判は的確でした。

防災こそ

 
 ――東日本大震災級の地震が起きたら。

 あのような地震と津波に襲われたら、中部空港は水没します。航空機は流され、空港島は孤立するおそれがあります。私は震災直後に愛知民報への投書で警告しました。

 最近、大学や研究機関が巨大地震や最大級の台風が来襲した場合、中部空港は水没し、壊滅的状態に陥るという深刻なシミュレーションを発表しています。

 力を入れるべきは2本目滑走路でなく、地震津波防災対策です。

県民にツケ

 
 ――財界や県は、西知多道路建設で空港の利用増をねらうが。

 西知多道路は知多半島の西側、東海市と常滑市を結ぶ自動車専用道路で、建設費は1500億円です。

 県の理屈はまちがっています。空港連絡道路はガラガラです。あなたは、空港到着時間が多少短縮されるからと言って、必要以上に飛行機を使いますか。道路を造れば空港利用が増えるというゼネコン型開発では、増えるのは利用ではなく、建設負債です。ツケが県民に回る結果になります。

 知多半島西部の地域交通のあり方は、住民要求にもとづいて別に検討すべきです。

構造改革

 ――大村県政の重点は結局、企業誘致のための大型開発推進。

 そうです。「世界と闘える愛知・名古屋」「世界からヒト・モノ・カネを呼び込む」というスローガンで、この愛知に、国内のほかの地域や外国よりも、大企業がもうかる仕組みをつくろうとしています。 

 その仕組みの柱が、高速道路、空港、港湾などの大型開発です。県と名古屋市を合体する中京都構想は、大型開発推進のために権限と財源を集中させる仕掛けです。大村県政のもとで、愛知の空港開発の動きに十分注意する必要があります。