愛知民報

【11.09.04】画期的な労災判決続く 愛知働くもののいのちと健康を守るセンターが総会 労働者、過労死家族の連帯で

 愛知県でたたかわれている過労死・労働災害の認定裁判で、画期的な判決が続いています。最高裁で7月に判決が確定した小池勝則さんの過労死事件、4月に名古屋地裁で勝利判決をかちとった元中学校教諭・鳥居建仁さんの公務災害認定訴訟などです。

 たたかいの推進力は愛知働くもののいのちと健康を守るセンター(愛知健康センター)、愛労連、名古屋過労死を考える家族の会などの連帯した運動です。

 8月27日に行われた愛知健康センターの総会で、高木弘己理事長(医師)は「正規労働者はメンタルヘルスが深刻だ。非正規労働者の健康実態はほとんど調査されていない。この間の裁判などの成果を確信に、大いに前進しよう」と訴えました。

 小池裁判の森弘典・主任弁護士は「この判決確定を力に、過労死防止基本法を制定させよう」と訴えました。小池さんの妻で裁判原告の小池友子さんは「私の経験を生かし、どの裁判も勝てるように頑張っていく」と表明しました。

障害者の過労死は“本人の症状が基準”と判断 小池過労死裁判

名古屋地裁で勝利判決後、支援者の祝福を受ける小池友子さん(左)=2010年4月
 豊川市の家電量販店・マツヤデンキで働いていた心臓機能障害者の小池勝則さん(当時37)が死亡したのは2000年12月でした。

 同社は「障害者枠」採用の小池さんに、一日中健常者と同じ立ち仕事をさせ、残業や販売ノルマを課しました。小池さんが突然死したのは就労から1カ月半後でした。

 労基署も名古屋地裁も、小池さんの死亡前1カ月の残業は33時間で、厚労省認定基準の45時間より少ないという理由で過労死を認めませんでした。

 しかし名古屋高裁は昨年4月、小池さんの過労死を認めました。判決は、憲法が国民の勤労権を認め、障害者の就労を援助する以上、業務が過重であったかどうかの判断は平均的な労働者の基準ではなく、被災者の症状を基準とすべきとしました。障害者の立場にたった判決でした。

 国は上告しましたが、最高裁は7月21日これを退け、高裁判決が確定しました。

教育の特性認めた名古屋地裁 鳥居公務災害

 元豊橋市立石巻中学校教員の鳥居建仁さん(51)が、学校祭の最中に脳内出血で倒れ高次機能障害になった問題で、名古屋地裁は6月、公務災害と認める判決を出しました。

 鳥居さんが発症したのは2002年9月。直前1カ月の残業は約122時間で、早朝練習や部活動指導後の教材研究、学校祭の準備などの激務が続きました。地方公務員災害補償基金は職務命令以外の残業をカウントせず、発症は脳内血管の持病と主張しました。

 判決は、教育労働の特性から部活動も包括的な職務命令としました。また、過重な労働が長期間継続し、持病があってもなくても、こうした労働を続ければ発症しうると判断しました。

 多くの教育現場で、部活動指導がボランティア扱いされるなか、この判決は大きな影響を及ぼします。しかし基金が控訴し、高裁で争っています。