自己責任で保育所探し 応益負担も
今、国は保育のしくみを大きく変えようとしています。それが「子ども・子育て新システム」です。
現行の保育制度は、国・自治体が保育に必要な子どもを保育所に入所させる責任がある公的保育制度です。
しかし「新システム」では、親が自分で保育所を探し、入れなくても自己責任となる直接契約です。自治体の責任はありません。障害児や低所得の家庭が排除される懸念もあります。「正当な理由」がなければ契約を拒めないとしていますが、その基準は不明瞭です。
利用は、介護保険制度のように「要保育度」を設定し、長時間・短時間で認定します。認定時間以上は全額自己負担。時間が長ければ利用料が増えるしくみはまさに「応益負担」そのものです。
しかも、国は「待機児解消を進める」と約束したはずなのに、7月27日にまとまった政府案では、待機児童の8割以上をしめる0~2歳児の受け入れを義務化しませんでした。
それでも強行に進めるのは、「新システム」のねらいが公的保育制度の解体だからです。今以上に企業参入をしやすくし国・自治体の責任をなくして保育を“買う?サービスにする。子どもを人権を有する主体と見ていません。
「新システム」は、すべての子どもを対象にしたとして評価されています。それ自体は否定しませんが、「子どもの権利条約」は第18条3項であえて「働く親を持つ子ども」をとり上げ、国は権利保障の措置を講ずべきといっています。保育は国が責任を持つべき福祉です。
緊急の待機児童解消は年間375億円でできます。320億円の政党助成金、出す必要のない米軍思いやり予算を削れば財源はあります。やる気になれば現行の保育制度のもとで認可保育所を増やし、待機児をなくすことは十分可能です。
社会福祉全体で、今も公的契約制度が残っているのは保育などごく一部です。国がこれを取り除きたいのは、社会福祉全体を市場化したいからです。
2013年施行予定の、障害者自立支援法廃止後の新法に直接契約・応益負担を温存し、介護保険との統合、さらなる市場化の道を残すため、保育に公的契約制度が残っていては具合が悪いのです。
すべての分野が絡み合って、社会保障・社会福祉の変質がすすんでいます。その根本を見誤らず、幅広い連帯で人権としての社会保障・社会福祉の実現に向けた運動をすすめていきましょう。