生活悪化を反映
制度の即時廃止を訴える年金者組合の人たち=2日、名古屋市東区
後期高齢者医療の保険料が払えず、正規保険証より有効期間の短い短期保険証(短期証)の発行が急増しています。
保険料は、年金月額1万5000円以上の人は年金からの天引き(特別徴収)、それ未満の人は口座振替によるか、市町村役場に直接支払います(普通徴収)。保険料の滞納は普通徴収で発生し、生活苦が反映しています。
9ヶ月で倍増
保険料を一定期間滞納すると短期証交付の対象とされます。短期証は3カ月か6カ月で有効期限が切れ、そのつどに更新手続きをしなければなりません。その際、役所から滞納分の支払いを求められます。県内で昨年3月末262人でしたが、12月末には516人と約2倍に増えました。
自治体で対応に差
県内市町村で短期証の発行件数が最も多いのは名古屋市。担当者は「広域連合の指示があり、6カ月以上の滞納者に短期証を発行した。資産など保険料支払い能力などの調査はしていない」と本紙の取材に答え、事務的に発行していることを認めました。
発行ゼロの春日井市の担当者は「滞納者宅を訪問し、面接し分割払いなど相談に応じている。短期証は極力発行しないようにしている」と言います。
本紙の問い合わせに愛知県の後期高齢者医療保険を運営する広域連合は「短期証発行の基準・目安とともに、短期証を渡す際に納付計画を相談するよう通達を出した。どの程度の滞納期間で発行するかは市町村の判断」と回答しました。
保険証未渡し
短期証が被保険者に渡らず役所に留め置かれ、無保険状態の高齢者が67人います。
広域連合は未渡しの理由について「訪問したが留守だった。話し合いを拒否したため短期証を持ち帰ったなどの例が市町村から報告されている」と述べています。
愛知県後期高齢者医療広域連合議会で2日、日本共産党の田口かずと議員(名古屋市議)は「保険証未渡しは命にかかわる問題。職員が訪問した時に本人にきちんと渡すべきだ」と要求しました。
市町村に働きかけを
後期高齢者医療制度は県の広域連合が運営していますが、実際の保険徴収や保険証交付の業務と判断はかなりの幅で市町村に任されています。
低所得高齢者の生活悪化を無視した画一的な短期証への切り換えをさせないために、市町村への働きかけが求められています。