かつて「福祉日本一」といわれた名古屋市で、市民向けの行政サービスの低下が顕著になっています。
名古屋市の財政力指数は全国の政令市の中で、川崎市に次いで2位。しかし、行政サービスの水準は下位にあるのが目立ちます。
日本経済新聞の『日経グローカル』2008年12月15日号の特集「全国市区の行政サービス調査」によると、60点を満点として、名古屋市は「子育て環境」が31・9点で15位、「高齢者福祉」は27・2点で12位、「教育」は20・6点で8位にとどまりました。
名古屋市の行政サービス評価
全国17政令市中の順位(2008年調査当時)
項目 | 順位 |
子育て環境 | 15 |
高齢者福祉 | 12 |
教育 | 8 |
出典:「日経グローカル」2008年12月15日号
福祉から開発重視へ
日本共産党が与党だった革新市政が終わり、同党を除く「オール与党」市政になると、福祉重視から開発重視に市政の方向が大きく転換しました。
前の松原「オール与党」市政は、愛知県政と一体で、中部財界が要求する中部国際空港、高速道路、大企業ビル、徳山ダムの建設など大型開発事業を推進してきました。
その一方、市民向けの施策を次々とカット。05年度からの4年間だけでも、国民健康保険料、介護保険料、保育料を値上げ。市立高校などの授業料も値上げ。学校運営費は大幅に削減され、私立幼稚園への補助金も減らされました。
高齢者福祉も次々に後退。市バス・地下鉄の敬老パスの本人負担金は06年度に値上げされ、名古屋城などの市立施設の入場料も有料に。敬老祝い品は88歳と100歳だけに。80歳の「医薬品引換券」は廃止されました。
国民健康保険料の滞納世帯は約8万(10年6月)にのぼり、特別養護老人ホームの入所待機者は、約5500人(09年4月)。保育所の待機児童数も1700人(10年10月)を超えています。
あやうい河村市政
09年の市長選挙での河村市政の誕生は「閉塞状況を変えてほしい」という世論の反映でした。
ところが河村市長は「定率減税(金持ちはゼロ)」の公約をほごにして、大企業・金持ち優遇の「市民税一律10%減税」をごり押しし、減税を強権政治の道具にしました。
「減税行革」を主張し、市立病院の民間売却を断行。行政サービスの民営化と市場化の新自由主義「構造改革」路線をあらわにしました。
河村市政は、中部財界が求める高速道路、中部国際空港2本目滑走路といった大型開発事業を推進する立場です。
河村市長は議会解散を主導。自ら党首を務める地域政党「減税日本」の市議会過半数獲得をテコに市長言いなりの議会をつくろうとしています。県・市・一体の「中京都」構想は、大型開発推進のための自治体広域化です。
閉塞打開 展望示す 「くらしと景気をよくする名古屋ビジョン」
名古屋・革新市政の会の八田ひろ子さんは「くらしと景気をよくする名古屋ビジョン」の実現を訴えています。
名古屋ビジョンは国民健康保険料の年1人1万円引き下げ、老人ホームと認可保育所の増設、住宅リフォーム助成による仕事起こし、新卒者らの正規雇用の拡大など、市民生活の安定・向上と中小企業の振興を軸に、内需中心の経済循環をつくり、名古屋発展の新たな展望をひらこうというものです。