トヨタ自動車は豊田市と岡崎市の境にある里山地域にテストコースをふくむ大規模な研究開発施設の建設を計画しています。計画地域一帯には絶滅が心配される希少な生物が生息しています。名古屋市内で10月25日に開かれた、生物多様性交流フォーラムでの自然保護活動家の大羽康利さんの報告を紹介します(要旨)。
トヨタ自動車は、本社から車で30分のところにある地区に研究者4000人、ほかに福利厚生施設などで1000人ほどが働く“まち”を作ろうとしています。テストコースは2キロメートルの直線路、6キロメートルと4キロメートルの周回路を計画しています。総面積は660ヘクタール。愛知万博・長久手会場の4・2倍です。うち270ヘクタールを開発します。
予定地には絶滅危ぐ種がたくさん生息しています。野鳥では絶滅危ぐIB類のミゾゴイ、ブッポウソウ、ヤイロチョウ、II類のサシバ、ハヤブサ、ヨタカ、サンショウクイがいます。
県企業庁とトヨタは2008年から翌年にかけ猛禽(もうきん)類の繁殖状況を調査しました。造成地域内の営巣個所は08年にはサシバ2、ハチクマ1、区域外でサシバ11、ハチクマ4、オオタカ2が確認されました。09年はサシバ3、区域外ではサシバ5、ハチクマ8、オオタカ3でした。猛禽類の生息理由は、えさのヘビ、トカゲ、カエル、昆虫が豊富だからです。
ミゾゴイは夏鳥としてやってくるサギ科の鳥で全国の生息数は1000羽以内。大変貴重な種です。日本でしか繁殖が確認されていません。08、09の両年、造成区域とその周辺での繁殖は確認されていません。
こんなに貴重な鳥がいるのですから、調査はあと2年は必要です。COP10が終わるのを待って環境影響評価準備書を出すというのはとんでもない話です。
トヨタの「生物多様性ガイドライン」は「生物多様性の重要性を認識し、トヨタ基本理念に基づき、住みよい地球・豊かな社会の実現と、その持続的な発展を目指し、自動車・住宅事業、新規事業、社会課題への貢献等において、生物多様性に取り組みます」とあります。これを本当にやらせるには大きな力がいるでしょうが、21世紀を生きる人間の責任と思っています。