愛知、岐阜を中心とした中部地域は、航空宇宙関係のメーカーや研究機関が集中立地し、航空機生産額では全国の約50%を占めます。国・県・財界の「産官学連携」で航空宇宙産業の“振興”が図られています。
実験機を誘致
愛知県は県営名古屋空港(豊山町)に独立行政法人宇宙航空開発機構(JAXA)の誘致をすすめてきました。
昨年6月、同機構の飛行実験場の進出が決定。県が約2400平方¥外字(8459)の格納庫、事務室、倉庫を整備します。
JAXAが同地を「最適」とした理由は、県営名古屋空港がジェット機が離着陸できる長さ2740メートル)の滑走路を持つことや「航空宇宙産業の中心的な集積地であり、後背圏の立地条件がよい」ことなどを挙げています。
新型機の開発
愛知の航空宇宙産業で中心的役割を果たしているのが三菱重工名古屋航空宇宙システム製作所です。
ボーイング787型旅客機の主翼を作っている大江工場(名古屋市港区)、HーIIAロケットを組み立てる飛島工場(飛島村)、航空自衛隊のF2、F15戦闘機を製造している小牧南工場があります。
小牧南工場で三菱が開発する70~90席の国産小型ジェット旅客機MRJの組み立てが予定されています。
県はMRJの技術試験のために県営空港隣接地の土地を三菱重工に来年4月から10年間有償で貸し付けます。
三菱重工のほかに、川崎重工(弥富市)、富士重工(半田市)がボーイング787の胴体や中央翼を製造しています。機体材料になる炭素繊維強化プラスチック(複合材)は東レ(名古屋市港区)が製造しています。
軍需と一体
航空宇宙産業の中心は、兵器生産です。三菱重工は旧日本軍のゼロ戦の製造で有名です。
三菱重工名古屋誘導推進システム製作所(小牧市)は、ロケットのエンジン開発や地対空誘導ミサイル“ペトリオット”、空対空誘導ミサイル“AAM3”など自衛隊の誘導弾を製造しています。
航空自衛隊小牧基地が使用している県営名古屋空港は、同空港周辺地域への航空宇宙産業の立地にともない、いっそうの軍用化が心配されます。
市民による監視を 原水爆禁止愛知県協議会副理事長 横江英樹さん(日本共産党岩倉市議)
航空宇宙産業は景気に左右されない業種なので、県はJAXA誘致など研究開発のインフラ整備に熱心です。しかし業界の実態は軍需依存。基地機能強化に拍車をかける危険性もあります。自衛隊機の低空飛行で基地周辺の住宅密集地に騒音被害も出ています。市民による監視活動が求められます。