市民の運動が行政を動かす
日進市藤島町の里山「東部丘陵」で耐火粘土採掘業者が計画していた約34ヘクタールの鉱山開発に“ストップ”が突きつけられました。業者が開発のため提出した保安林解除申請に林野庁が「不許可」の方針を決めたもの。自然環境を守る広範な市民の運動が実りました。
業者は1999年、中部経済産業局に鉱業権を出願。01年に許可が下り、03年には事業計画が認可されました。周辺道路に次つぎと「立ち入り禁止」の看板を立て、土地を囲い込みました。業者が買収した土地は、国が土砂流出防備の保全林に指定しているため、保安林の解除が必要です。
採掘業者は、産業廃棄物処理業者でもあり、「粘土を取った跡地が産廃処分場になってしまうのではないか」という危ぐももたれていました。
開発予定地は名古屋市東部を流れる天白川の水源地域。サギソウ、シラタマホシクサといった湿地特有の貴重な植物が群生し、オオタカの営巣も確認されています。
地元の市民団体や近くにある大学などは2000年、自然破壊につながるとして国や県に対し1万7000を超す反対署名を提出。2000年6月、日進市議会は「耐火粘土採掘業者による日進市東部丘陵の採掘計画の中止と同区域の保全についての請願書」を全会一致で採択。国に日進市東部丘陵地域の環境保全を求める意見書も可決されました。
日進市は広範な市民の世論に押されて05年4月、林野庁長官および経済産業大臣に鉱山開発に反対を表明する要望書を提出しました。06年2月には神田真秋愛知県知事に要望書を提出しています。
事業者から保安林解除の申請書を受けた愛知県は今年3月、県森林審議会を開き、林野庁に対し「反対」の意見書を送りました。
日本共産党の県議団(当時)や日進市議団は貴重な生態系を破壊する開発の中止を求めてきました。
比嘉知政日本共産党日進市議は「住民運動と日本共産党が力を合わせて行政を動かし、開発をストップさせたことは画期的。自然保護の観点から鉱業権のあり方を見直す時期です」と話しています。