「環境破壊がはっきりしており、目的もことごとく破綻している。環境保全の観点から国交大臣に事業中止を求めるべきだ」――。日本共産党書記局長の市田忠義参議院議員は4月20日の参議院環境委員会で、小沢鋭仁環境相にこう迫りました。同大臣は「環境省としても、私としても、もう一回検討し、その後判断させていただきたい」と答えました。
国土交通省が愛知県設楽町の豊川上流に建設を計画している設楽ダムは建設費2070億円の多目的ダム。
「自然破壊の無用ダム」との批判が高まり、民主党政権は「検証」の対象にあげています。検証作業にあたっている国交省の「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」は今夏をメドに「中間とりまとめ」を出す予定といわれます。
今回の市田氏の質問により国交省がおこなってきた設楽ダムの環境対策が“建設の結論先にありき”のずさんなものであったことが浮き彫りになりました。
ダム建設予定地に生息している天然記念物の淡水魚ネコギギの移植実験は、下流に200尾放流されたうち生存が確認されたのはわずか3尾。小沢大臣も「順調とは言い難い」と不調を認めました。
市田氏は、設楽ダム建設による三河湾の水質への影響調査を求める海洋環境専門家や漁協の意見は「ほとんど反映されていない」と追及しました。小沢環境相は「広域的な視点は極めて重要」と答え、国交省の影響調査の不足を認めました。
民主党政権は「検証中」としながらも、今年度国家予算に約28億円の設楽ダム事業費を計上。本体工事は未着工ですが、工事用道路の造成などの関連工事が進んでいます。
関係地域選出の民主党国会議員は建設推進を明言し、同党の愛知県議団も政権に「中止」を求めていません。
政権の「見直し」がどの方向に動くか予断を許しません。中止へ政治を動かす県民の運動が求められています。