名古屋市の河村たかし市長(前民主党衆院議員)が開会中の市議会に前代未聞の議員定数半減案を出そうとしています。経費節減の「行革」どころではなく、議会破壊・市長強権化の暴挙です。
半減案は現行定数75を38に減らすもの。同市の16区のうち、3つの区を定数1に、6つの区を定数2に、中都市並みの人口22万の中川、緑両区でも定数4に削減します。
河村市長は「市民に分かりやすい形を優先した」と言いますが、1選挙区で1人しか当選しない小選挙区はぼう大な「死に票」を生み、2人区は2大政党の議席独占をもたらします。「分かりやすい形」とは、多様な民意の切り捨てです。
名古屋市の総人口は約225万人。地方自治法の定める上限定数は88。現行の75は全国18政令市のなかで3番目に高い削減率。議会関係者は「名古屋はもう相当削減している」と言います。
38は、政令市中最少の人口約70万人・市議定数52人の岡山市を下回り、人口38万人・市議定数40の岡崎市より少なくなります。
河村市長の議員定数削減のねらいは、「議会改革」の名で議会を弱体化し、市長の強権体制を確立すること。
同市長は、議会が市長に対する批判・監視権や議決権をもつ現行制度を「立法ミス」と批判。市議会が市長の「議会改革」案を認めなければ、支援団体を動員し議会解散の直接請求運動をおこすとどう喝しています。
市に福祉施策を求めてきた障害者は言います。「これまでの市長には『枠内のこわさ』を感じたが、こんどの市長には『枠を壊すこわさ』を感じる」
河村市長は衆議院議員時代の2008年秋に発表した「河村ビジョン・庶民革命」のなかで、市町村議会の「発展的解消」をうたっています。
現在の県をより広域の州に切り換え、地域の中学校区単位に住民参加の「ボランティア議会」をつくれば、市町村の議会と議員は無用という考え。
河村市長が「ボランティア議会」構想を念頭に、今年度市内8地域でモデル実施する「地域委員会」は、委員は住民に選挙されますが、市長の行政機関の一部。年間500万円から1500万円の地域予算の使い道を市長に提案できるだけです。ほんものの議会のように、行政監視権や議決権はありません。
1日、日本共産党名古屋市議団は「民意切り捨て、民主主義破壊、強権政治の『議会改革』は言語道断」として河村市長の暴走を阻止する緊急行動を市民によびかけました。