愛知民報

【09.12.06】名古屋市 河村市政 7ヵ月どうみる 言いなりにならぬと議会つぶし 市長が民主主義に重大攻撃

 名古屋市長に元民主党衆議院議員の河村たかし氏が就任して7カ月。「日本減税発祥の地ナゴヤ」「日本民主主義発祥の地ナゴヤ」という2大看板をかかげてスタートしましたが、ここにきて、市民の期待にそむく危険な問題点が浮上してきました。
「福祉予算を削らないで」と訴える障害者と家族ら=11月16日、名古屋市中区

公約違反

 第1の問題点は、河村市長の公約の「市民税10%減税」。

 同市長は市長選マニフェストで「定率減税(金持ちはゼロ)、定額減税、子育て減税、勤労者減税、社会保障減税、それらのミックスも」と書いていました。法人市民税の減税は明記されていません。

 ところが出てきた「減税」案は、個人と法人の両市民税の定率減税。所得制限なく減税の恩恵が大企業と金持ちに多く、低所得者には少ない「逆立ち減税」です。

 市民の半数の113万人は「減税」の対象にならないうえに、市長がいう「1人1万5000円の減税」を受けるのは納税者の3割。減税の多くの部分が大企業や富裕層に集中することが明らかになりました。

 減税財源も大問題。「減税」による税収不足を埋めるため、来年度予算を今年度予算より補助金・投資的経費・物件費は30%、福祉・医療をなどの扶助費を3%削減するとしています。

 「10%減税」は恒久減税。来年度以降も税収が落ち込むなら、職員の定数や人件費、福祉・市民サービス予算のいっそうの削減も心配されています。

福祉政策

 第2は、もうひとつの公約「地域委員会」をめぐる問題。

 民主的な方法で住民代表を選ぶ住民自治の仕組みは地域づくりに役立ちます。しかし、市長の「地域委員会」構想は、市の福祉事業を民間化・民営化する「構造改革」論とむすびついています。

 市長は各区で開かれている「地域委員会」の説明会で、保育所の入所待機児童のほか、不登校や虐待されている児童も「市ではやれない」「それぞれの地域で見てくれ」と発言しています。

 市長は、500億円をかけて現在の名古屋城天守閣を木造で建て直す事業を始めようとしています。「福祉は地域委員会でやり、市役所は名古屋城づくりをやる」―。市のやるべき福祉事業を地域に押し付け、市は大型事業に力を注ぐ仕組みをつくろうとしています。

事実否定

 第3は、歴史認識・平和問題です。

 河村市長は、衆議院議員時代から「南京大虐殺」の事実や「従軍慰安婦」の強制性を否定。憲法9条改定を主張する改憲タカ派。

 9月議会で自民党議員の質問に、旧日本軍が中国の南京を攻略したさいにおこなった非戦闘員の大量殺害事件「南京大虐殺」を「誤解」だと否定し、歴史教科書の採択に介入する姿勢を示しました。

強権政治

 第4は、市長いいなりの議会をつくる「議会改革」。

 11月定例市議会に市長が提出した「住民分権を確立するための市政改革ナゴヤ基本条例(政治ボランティア条例)」案に、「市民税10%減税」「地域委員会」「議会の改革」を「住民分権の3本柱」とこじつけて押し込み、丸ごと賛成しないと議会解散リコール運動をおこすと議会に圧力をかける乱暴きわまる態度です。

 条例案の「議会改革」の中心は市議定数の半減。市長はさらに1選挙区で1人しか当選できない小選挙区制の導入を公言しています。自著では市町村議会の「発展的解消」をうたっています。議会制民主主義破壊です。

「構造改革」

 第5の問題は、これらの問題点をつうじて浮かび上がってきた市長の改憲型「構造改革」論。その姿は―。

 ?「市民税10%減税」によって政策的に税収不足をつくり出し、「ムダを削る」と称して福祉・医療・教育をふくむ聖域のない行財政改革を断行。民生事業は「地域委員会」に移し、市の予算と人材を大型事業に重点化。大企業・金持ち優遇の「減税」を売り込み、大企業や富裕層を名古屋に誘致する。

 ?学区の「地域委員会」を「ボランティア議会」に見せかけ、市長にたいする批判・監視権や立法権をもつ市議会の役割を決定的に弱め、市長の強権政治体制をきづく。

 ?日本が行った侵略戦争や戦争犯罪を反省せず、憲法9条の恒久平和原則をくずし、軍隊を持ち戦争できる日本をつくる。

 名古屋の進路を誤らせないため、市民が冷静な目で河村市政を検証する必要があります。