日本の医療は、全国民がいずれかの公的医療保険制度に加入し、医療機関で必要な医療を受けることができる国民皆保険制度です。しかし、自営業者や年金生活者が加入する国民健康保険(国保)で、保険料が払えず、医療が受けにくい事実上の“無保険”状態が広がっています。
国民健康保険の保険料(税)を払えない世帯が愛知県内で今年6月現在、国保加入世帯の21・3%、23万1995世帯(愛知県社会保障推進協議会調査)にのぼっています。
滞納世帯の増加にともない正規の保険証を取り上げる制裁措置が広がっています。
同協議会の今年6月の調査では、正規のものより有効期限の短い短期保険証の発行世帯は6万3155(滞納世帯の27・2%)。医療機関窓口でいったん医療費全額を負担しなければならない資格証明書の発行は3882世帯(滞納世帯の1・7%)となっています。
名古屋市の資格証明書発行世帯数は県内の5割を超えています。同市では06年までの資格証明書発行(毎年6月現在)は10数世帯でしたが、07年662、08年1088世帯と増え、河村市政になってからも急増。今年6月1日2037世帯、さらに9月末には2964世帯と08年の2・7倍になっています。
滞納増大の最も大きい原因は同市の高い保険料。05年に1人当たり平均7万8282円だったのが今年は9万1085円。政令市で4番目に高い保険料です。来年度も1万円前後の値上げが予定されています。
多くの自治体は一般会計から国保会計に支援金を繰り入れ、国保料を低く抑える努力をしています。ところが名古屋市は繰り入れを減らしています。02年の国保加入者1人当たりの繰り入れ額は2万9356円。09年は1万5239円と、半減させています。
建設業を営む男性(62)は「景気悪化で収入が減少し、保険料を昨年末から払えなくなった。今は分納しているが減免を拡大してほしい」、年金生活の男性(67)は「河村市長のいう減税の恩恵はほとんどない。それよりは国保料を下げてほしい」といいます。
「名古屋の国保と高齢者医療をよくする市民の会」と愛知社保協9日、国民健康保険の改善を求め、市内16区役所を訪ね、資格保険証発行の中止、分納世帯への正規保険証の発行などを求めました。