「常滑市りんくう町」とよばれる中部国際空港の対岸部(通称「前島」)の企業用地がほとんど空き地になっています。神田県政がえがいた「中部臨空都市」構想は崩れつつあります。
愛知県企業庁が埋め立て造成した前島は約123ヘクタールという広大な土地。しかし、これまでに企業が進出したのは名鉄空港線の「りんくう常滑」駅周辺のごく一部にとどまっています。駅前にホテルが建ったものの、駅は開設5年の今も無人。自動改札機があるだけです。
他に目に付く建物は「ジャンボエビフライ」が売り物の食堂と結婚式場ぐらい。鳥羽~常滑間の航路が廃止されたため、フェリーターミナルは閉鎖され、白く塗りつぶされた看板がわびしげです。
前島中心部に今秋、大型商業施設「イオンモール」が開業する計画でした。しかし、イオンは出店を2011年度に延期。同社が県企業庁と賃貸借契約を結んだ20ヘクタールの広大な建設予定地は草ぼうぼうの状態です。
企業誘致に苦戦する企業庁は分譲・賃貸価格の“ダンピング”に出ています。今月1日に発表した前島の値下げ幅は9・6~12・6%。最大の値下げは「りんくう常滑」駅南側の商業用地域でした。
県が前島への波及効果を期待した中部空港は業績不振に陥っています。旅客数は開港した2005年度をピークに年々低下。貨物取扱量も減少傾向です。
前原誠司国土交通大臣は13日、東京・羽田空港の優先整備を打ち出しました。中部空港の第2滑走路や空港アクセスの西知多道路の建設に「過大開発」の批判が高まっています。
「中部空港見直しネット」代表の中川武夫中京大学教授は「予想通り、前島開発は失敗でした。空港本体も厳しい状況が続くでしょう。第2滑走路にはメリットなし。中部国際空港は“ハブ空港”になりえません」と話しています。
造成した土地は“塩漬け”の不良在庫にもなりかねません。分譲・賃貸価格の引き下げは、県が企業誘致計画のゆきづまりを認めたも同然です。