民営化された郵政の現場で、「ゆうメイト」と呼ばれる非正規雇用職員や委託配達員が増え、会社都合で一方的な契約打ち切りが行われています。
郵便の集配業務を行う日本郵便(郵便事業株式会社)の名古屋市内のある支店は8月、「ゆうパック」の配達員20人に“委託契約の解除”を通告しました。
日本郵便は2006年6月に日本通運との共同出資で宅配便会社JPエキスプレスを設立。今年10月1日には日本郵便の「ゆうパック」と日本通運の「ペリカン便」の宅配サービスを完全統合する予定でした。
事業統合した場合、日本通運側の担当地域は集配効果の高い駅周辺の商業地。一方、日本郵便に割り振られた地域は支店から遠く昼間は留守が多い住宅街。
これは「ゆうパック」の配達員にとって“死活問題”になります。配達員と日本郵便との契約は雇用契約ではなく、「1個当たり150円台」という“委託(請負)契約”だからです。
委託と言っても、実態は雇用。配達員には日本郵便の制服や携帯電話を貸与され、日本郵便の指揮命令下で働いており、雇用・労働関係法の規制を逃れるための偽装請負の疑いが濃厚です。
解除を通告された配達員から相談を受けた東海労働弁護団が、日本郵便にたいし契約内容の協議を要請しました。
宅配便サービスの事業の統合は総務大臣の認可が下りず延期になりました。結果的に「9月末まで」といわれていた契約は来年3月末まで延長されました。
郵政産業労働組合東海地方本部前書記長の渥美俊雄さんは「20人の配達員を辞めさせることは、誤配、欠配なく正確に荷物を届けるというサービスを日本郵便が放棄することにほかなりません。配達員との契約は、これまでの委託契約ではなく、雇用社員にするべきです」と語っています。
【郵便事業株式会社】郵政民営化で旧日本郵政公社から分割された会社。愛称は「JP日本郵便」。郵便物の取り集め、区分け、配達と「ゆうゆう窓口」の取り扱いが主な業務。