勝利へ支援の呼びかけ
広島や長崎で被爆し健康が破壊されたとして原爆症認定を求めて国を訴えた裁判の控訴審が10日、名古屋高等裁判所で結審しました。判決は来年3月11日に出される予定。
この日の最終弁論で一審の名古屋地方裁判所で原爆症と認められなかった中村昭子さん(82)と森敏夫さん(84)、原告弁護団事務局長の樽井直樹弁護士が、6年間にわたる裁判の思いを込め意見を陳述しました。
被爆体験を語る 原告 中村昭子さん
長崎で被爆してからの私は「どうして私がこんな目にあわなければならないのか」という苦しい思いを持ち続けてきました。
多くの差別体験から、被爆者であることを言わずに暮らしてきました。裁判をたたかう中で多くの方々に被爆体験を語りました。被爆体験を大きな声で言えるようになったことを誇りに思います。
裁判を通じて多くの人が原爆被害に関心を持ち、核兵器をなくす道が開かれることを強く望みます。
恒久平和に貢献 原告 森敏夫さん
原爆症を認定しなかった名古屋地裁判決は私の差別、苦しみ、嘆きを否定された思いでした。控訴審をたたかう間に全国各地で国の敗訴判決が出され、名古屋地裁判決は誤りだと確信しました。
私が裁判をたたかってきたことが、被爆者のためになり、核廃絶と恒久平和になることを願っています。国は核廃絶などの課題に全力で取り組む責任があると思います。私たちと同じ苦しみを味わう人が再び出ないよう願います。
全面解決めざす 原告弁護団事務局長 樽井直樹弁護士
全国で裁判をたたかう中で、政府は原爆症認定基準を見直し、新たに原爆症と認定される人は増えました。しかし新しい審査基準の下でも約8000人に上る審査滞留者を生んでいるなど、問題を残しています。
今年8月6日に日本原水爆被害者団体協議会と麻生前首相との間で全原告を救済する確認書が締結されたことは歓迎します。しかし議員立法による基金の内容が不明の現段階では控訴を取り下げることはできません。
日本政府は、原告らが身を切る思いで訴えた被爆の実態や核兵器使用の非人道性を正面から受け止め、被爆者の思いを世界に発信し、核兵器のない世界をつくるよう努力するべきです。
【原爆症認定訴訟】
国に原爆症認定を求め2003年から全国17カ所306人が裁判を起こす。06年の大阪、広島地裁の原告全員勝訴判決を始め、今年8月までに東京高裁など19裁判所で原告勝訴判決。愛知県では03年4月に4人が提訴。名古屋地裁は07年1月、2人に原爆症と認定し、2人の請求を却下。原告が控訴。
原爆症と認定されれば月額約14万円の医療手当が支給される。認定基準が厳しく、認定患者は被爆手帳保持者約23万人のうち約4千人にとどまる。