愛知民報

【09.08.02】設楽ダム 必要性に根拠なし すでに需要上回る水源を開発 市野和夫さん(設楽ダムの建設中止を求める会代表)に聞く

市野和夫さん
 愛知県は7月5日付の新聞各紙に掲載した「広報あいち」で、「すぐ涸れ、すぐ溢れる東三河豊川流域の問題を解消するためにずっと必要とされてきたダム」と設楽ダム建設の必要性を述べています。設楽ダム建設の中止を求める会代表の市野和夫さん(愛知大学元教授)に意見を聞きました。

「すぐ涸れる」?

 豊川総合用水事業が完成し、完全運用されるようになった2003年度以降の6年間のうち、05年度を除いて節水はゼロです。

 05年は観測史上最少雨量を記録した例外的な年(100年に一度の少雨年)でしたが、給水圧を一部下げただけで、断水などの被害はゼロでした。

 豊川総合用水事業で、需要を大幅に上回る水供給施設が完成していることが水事情好転の要因です。

「すぐ溢れる」?

 豊川は、霞堤(かすみてい)とよばれる不連続堤・遊水地が生きている川であり、河川水が堤防の不連続部分から遊水地に溢れることによって破壊的な水害を防いでいます。

 愛知県は遊水地への溢水(いっすい)を洪水と呼んでいるようですが、これは豊川の正常な営みであって、水害には直結しません。道路の冠水対策などは道路を盛り土してかさ上げすればすみます。

 現在では、ダムなしで、戦後最大規模の洪水がほぼ安全に流下できるところまで河川改修工事がおこなわれています。

 遊水地(霞地区)対策としての小堤締め切り対策は、ダム建設を止めてその予算を改修に振り向ければ、早く進むはずです。

「環境と調和」?

 環境と調和するダムなど真っ赤なうそです。国交省の掲げる設楽ダムによる「流水の正常な機能の維持」は、実態から程遠いものです。

 豊川上流の寒狭川頭首工・導水路建設と併せて国交省が実施した「流況改善事業」によって、寒狭川の下流はアユも棲めない川になってしまいました。

 寒狭川頭首工の上流で川底を掘りあげて、砂利や玉石をすべて陸へ上げてしまいました。そのため、下流へ一切砂利が供給されなくなり、アユなどほとんど魚が棲めない川になりました。

 愛知県内に最後に残された自然豊かな寒狭川上流部(アユ・アマゴ釣りで現在はにぎわっている)が、設楽ダムによってひどい環境破壊を受けることは明らかです。

 豊川用水への取水による水量の減少とダム堆砂による川への砂利供給停止は、しばらくの時間経過を経て、三河湾にまで悪影響が及ぶのは目に見えています。

建設中止を

 設楽ダムは、治水、利水の面で必要はなく、そればかりか、河川環境を著しく破壊し、三河湾の生態系にも悪影響を及ぼします。こんな事業は、即刻見直し、中止するべきです。

【設楽ダム】国土交通省が設楽町地内の豊川上流(寒狭川)に建設するコンクリートダム。総貯水容量9800立方¥外字(8459)は県内最大。建設費2070億円、関連事業含め約3000億円。うち県の負担1400億円、下流市町の負担は22億円。120戸が水没し地元へのマイナス影響は甚大。利水、治水、河川環境改善が目的とされるが、それらに根拠はないと建設反対運動が起きている。