愛知民報

【09.03.15】ダム・導水路を考える?

木曽川水系連絡導水路

 筆者は2004年8月、日本共産党県議団の政策研究の到達をふまえ、本紙に『愛知のダム問題』を書き、木曽川水系連絡導水路構想を「ムダを重ねる」ものと批判しました。

 それから4年余。徳山ダムは完成し、導水路事業は本格調査の段階を迎えています。

 しかし、やはり水需要は伸びず、「ムダを重ねる」という認識は変わりません。

ムダ上乗せ

 “脱ダム時代”というのに、徳山ダムは木曽三川のひとつ、揖斐川の上流部につくられた浜名湖の2倍の貯水容量をもつ日本最大のダムです。

 木曽川水系連絡導水路は、徳山ダムから長良川と木曽川に水道・工業用水、異常渇水時の補給水を引く890億円の大事業です。

 建設費は、国のほか、愛知県が約318億円、名古屋市は約121億円を負担します。治水分は河川環境維持の名目で税金で払い、利水分は水道料金に転嫁されます。結局は県民負担です。

 この導水路建設は、大量の「使われない水」「売れない水」を長良川河口ぜきや徳山ダムにかかえこんだうえに、批判をかわすために、ムダの上乗せになる導水路をつくり、そのツケを国民に押し付ける事業です。

“不良在庫”

 愛知県は04年2月、徳山ダムの利水計画を見直しました。

 水需要は今後も伸びると強弁し、徳山ダムの必要を理由づけました。そのうえで、導水路構想を念頭に愛知用水地域に徳山ダムの水を回し、尾張地域には長良川河口ぜきの未利用水をあてるという計画です。

 ところが、両地域の水需要の実績は水道用水が横ばい状態、工業用水は減少です。

 尾張地域の05年度の工業用水の給水量は90年度の55%に減っています。これは人口35万人の一宮市の年間給水量に匹敵する水量が“浮いた”ということです。

 自民党政府は水不足の危機感をあおりますが、“不良在庫”のように未利用水が増えています。

さらに導水

 県と名古屋市の大きな問題は、徳山ダムの水利権(水を取る権利)の3倍近くもある長良川河口ぜきの未利用水の処理です。

 県・市は連絡導水路の下流施設との抱き合わせで、長良川河口ぜきの未利用水を引くための新しい導水施設建設を計画しています。

 市当局の試算では、抱き合わせると木曽川水系連絡導水路の総事業費は950億円になります。増えた分は愛知県と名古屋市の負担です。

渇水対策

 政府や県は「渇水対策」を強調します。しかし、異常渇水時に徳山ダムから導く補給水は、住民や企業の断水対策ではありません。木曽川の流量を増やし、動植物の被害軽減と川の景観維持のためなどと言います。

 筆者は、「100年に一度」といわれる94年大渇水時の木曽川の被害状況を国交省中部地方整備局や東海農政局で調べました。

 被害資料の乏しさに驚きました。担当官も認めましたが、植物被害はほとんど見られず、魚介類への影響も一時的でした。

 国交省は、渇水の被害想定と補給水による環境保全効果を示すべきです。

転換の時

 水の使用量と水道事業の収益が順調に増えている時代は、水道料金を値上げしなくても巨額のダム建設費をまかなえました。

 しかし、時代は変りました。愛知県は長良川河口ぜきの建設費負担に耐えられず、2000年度に17年ぶりの料金値上げに踏み切りました。需要拡大を前提にした大型ダム政策のゆきづまりでした。

 しかし、自民党政府と神田県政は反省も転換もせず、長良川河口ぜきに続き徳山ダム建設をすすめました。

 今、長良川河口ぜきの未利用工業用水の肩代わりや徳山ダムの建設負担金が新たな重荷になりつつあります。名古屋市も同様です。

 大型ダムに頼る水資源政策を転換すべき時です。

立ち上がる

 日本共産党の国会議員団や名古屋市議団など関係地方議員団は、浪費型ダム開発政策の転換と木曽川水系連絡導水路の建設中止を求めています。

 先月、県民が、導水路事業への愛知県の支出差し止めを求める住民監査請求運動をスタートさせました。

 導水路計画のムダづかいと不当性を問うとりくみが広がっています。

(林信敏)